ゆがみのないコインを10回投げて表が7回出たとします。表の割合は 0.7 で、0.5 からはずいぶん離れています。しかし投げる回数を増やしていくと、この割合はしだいに 0.5 のあたりへ落ち着いていきます。
有限な母平均 をもつ同じ分布から独立に抽出するとき、標本の大きさ を大きくすると標本平均 が に近づきます。この性質を大数の法則といいます。

コインを離れて、平均 50 の連続量でも同じことが起きるのを見ます。図は母平均 50・母標準偏差 10 の母集団から1つずつ取り出し、そこまでの標本平均を記録したものです。横軸は対数目盛で、 が一桁のうちは 41 まで下がる系列もありますが、 が 1000 を超えるころには3本とも 50 のすぐそばを動いています。たまたま1本がそうなったのではなく、どの系列も同じように寄っていくところがこの法則の内容です。
近づくのは割合であって、回数の差ではありません。表と裏の出た回数の差は、投げるほどむしろ大きくなっていきます。「表が続いたぶん、これから裏が多めに出て帳尻が合う」という埋め合わせの力は働かず、単に分母が大きくなって過去のずれが薄まるだけです。
さらに母分散が有限なら、独立同分布標本では 、 です。チェビシェフの不等式 を使うと、これが0へ縮むことから弱法則を示せます。
コインを投げ続けて、表の出た回数を数えていきます。100回目と10000回目で記録を比べてみましょう。
| 投げた回数 | 表の回数 | 表の割合 | ちょうど半分との差 |
|---|---|---|---|
| 100 | 55 | 0.550 | 5 |
| 10000 | 5100 | 0.510 | 100 |
割合のほうは 0.550 から 0.510 へ、たしかに 0.5 に近づきました。ところが「ちょうど半分」との回数の差は 5 から 100 へ 、20倍に開いています。
この2つは矛盾しません。差が 5 のときの分母は 100 ですが、差が 100 のときの分母は 10000 です。差そのものは増えても、分母の増え方のほうがずっと速いので、割り算した結果は 0.5 へ寄っていきます。
ここを取り違えると「表が55回も出たのだから、次の100回は裏が多めに出るはずだ」という読みになります。しかしコインは過去の55回を覚えていません。次の100回もやはり半々あたりを中心に振れるだけで、過去のずれを打ち消しにはいきません。
なお、大数の法則が答えるのは「どこへ近づくか」だけです。近づいていく途中でどれくらい振れるのかは 中心極限定理 が受け持ちます。
有限な母平均をもつ同じ分布から独立に抽出するとき、大数の法則が保証する内容はどれですか。
ゆがみのないコインを1000回投げたところ、表が 540 回出ました。次の1000回について正しいものはどれですか。
有限な母分散をもつ分布から独立同分布標本を取ります。チェビシェフの不等式で大数の法則を示す根拠はどれですか。
ゆがみのないコインを 100 回投げるとき、表の出る割合の標準偏差はいくつですか。割合の標準偏差は で与えられます。