第1種の過誤と第2種の過誤 のうち、見落としのほうを裏返した量が検出力です。対立仮説が正しいとき、それを取り逃がさずに帰無仮説を棄却できる確率——差が本当にあるなら、それを見つけ出せる力を表します。

図には分布が2つあります。左は帰無仮説が正しいときの検定統計量の分布、右は対立仮説が正しいときの分布で、点線が棄却の境界です。左の分布のうち境界より右へはみ出した部分が 、右の分布のうち境界より左に残った部分が 。検出力は右の分布のうち、境界より右の塗っていない部分にあたります。この絵を眺めると、面積を大きくする道筋が見えてきます。
実際の調査や実験では、この関係を逆向きに使います。見つけたい差の大きさ・有意水準・望む検出力(0.8 を目安に置くことが多い)の3つを先に決め、そこから必要な標本の大きさを逆算する。検定は結果を判定する道具であると同時に、調べる規模を設計する道具でもあります。
そして検出力は、棄却できなかったときの読み方を決めます。検出力が 0.3 しかない検定で棄却できなかったとしても、差が無いことの証拠にはなりません。7割方は見落とす仕掛けで、見落としただけかもしれないからです。「差は認められなかった」という報告は、どれだけ見つける力のある検定だったのかとセットで読むものです。
測定値 が に従う場面を考えます。、 とし、有意水準 5% の上側の片側検定を行うので、1.645 以上の値が出たら棄却します。検出力は対立仮説のどの値を想定するかで変わるため、ここでは を想定した場合を求めます。
まず 1 個だけ測る場合。真の値が だとすると、棄却できる確率は です。差が本当にあっても、4回に3回は見落とす計算になります。
個の平均を使えば、 の標準偏差は に縮みます。棄却の境界も同じ割合で 0 に近づき、対立仮説の山との重なりが減っていきます。
| 測定する個数 | 1 個 | 4 個 | 9 個 |
|---|---|---|---|
| 棄却の境界 | 1.645 | 0.823 | 0.548 |
| 検出力 | 0.26 | 0.64 | 0.91 |
9 個に増やすだけで、検出力は 0.26 から 0.91 へ跳ね上がりました。有意水準は 5% のまま動かしていません。なお 4 個のときは境界と対立仮説の山の位置関係が本文の図とちょうど同じ配置になり、検出力 0.64 は図で塗り残された右側の面積にあたります。
検出力の説明として最も適切なものはどれですか。
検定の検出力を高める方法はどれですか。
ある検定で、測定を 1 個から 9 個の平均に変えたところ、検出力が 0.26 から 0.91 に上がりました。このとき第2種の過誤の確率はどう変わりましたか。