ひよこ統計

第1種の過誤と第2種の過誤

統計検定2級

検定は確率にもとづく判断なので、手続きを正しく踏んでも結論を誤ることがあります。誤り方は2通りです。帰無仮説が正しいのに棄却してしまうのが第1種の過誤、帰無仮説が誤りなのに棄却しないのが第2種の過誤。前者は無いものを有ると言う誤り、後者は有るものを見落とす誤りにあたります。

H0 H_0 を棄却しないH0 H_0 を棄却する
H0 H_0 が正しい正しい判断(確率 1−α 1 - \alpha )第1種の過誤(確率 α \alpha )
H0 H_0 が誤り第2種の過誤(確率 β \beta )正しい判断(確率 1−β 1 - \beta )
α=Pθ0 ⁣(H0 を棄却),β(θ1)=Pθ1 ⁣(H0 を棄却しない)\alpha = P_{\theta_0}\!\left(H_0 \text{ を棄却}\right), \qquad \beta(\theta_1) = P_{\theta_1}\!\left(H_0 \text{ を棄却しない}\right)
α \alpha :第1種の過誤の確率。有意水準として先に決める値、β(θ1) \beta(\theta_1) :第2種の過誤の確率、θ0 \theta_0 :帰無仮説が指定する母数の値、θ1 \theta_1 :対立仮説として想定する母数の値

2つは対等ではありません。α \alpha は検定する側が先に選べる値で、5% と決めればそれがそのまま第1種の過誤の確率になります。ところが β \beta は1つの数値に決まりません。「差がある」と一口に言っても、真の母数が θ0 \theta_0 のすぐ隣なのか遠く離れているのかで、見落としやすさが変わるからです。β(θ1) \beta(\theta_1) と引数を付けて書くのは、想定する値ごとに違う値になることを示すためです。

しかも2つを同時に小さくすることはできません。棄却域を狭めれば α \alpha は下がりますが、そのぶん棄却しにくくなるので β \beta は上がります。逆も同じです。標本の大きさを変えずに片方を減らせば、必ずもう片方が増える。両方を下げるには、標本を大きくして分布の幅そのものを狭めるのが基本になります(検出力)。

では α \alpha を 5% にするか 1% にするか、どちらが正しいのか。これは計算では決まりません。病気の見落としと不要な精密検査、どちらの痛みが大きいか——統計の外側にある事情を持ち込んで決める判断です。

画鋲を投げると、確率 0.62 で針が上を向くと言われています。手元の画鋲もそうなのかを、3回投げて確かめる検定を考えます。3回とも上向き、または3回とも下向きだったときに H0:p=0.62 H_0: p = 0.62 を棄却する、という約束にします。

第1種の過誤の確率は、H0 H_0 が正しいのに棄却してしまう確率、つまりこの2つの出方が起こる確率です。0.623+0.383=0.238328+0.054872=0.2932 0.62^3 + 0.38^3 = 0.238328 + 0.054872 = 0.2932 。5% どころか3割近くあります。3回では極端な出方が珍しくないので、検定としては誤りやすすぎるわけです。

第2種の過誤の確率のほうは、真の確率がいくつなのかを決めなければ計算できません。真の p p をいくつか置いて、棄却する確率とその余事象を並べてみます。

真の確率p=0.5 p = 0.5 p=0.8 p = 0.8 p=0.9 p = 0.9
棄却する確率0.2500.5200.730
第2種の過誤の確率 β \beta 0.7500.4800.270

真の確率が 0.62 から遠い 0.9 なら見落としは 0.270 で済みますが、近い 0.5 では 0.750 も見落とします。β \beta が「対立仮説のどの値を想定するか」で決まるとは、こういうことです。棄却する確率と β \beta は足して 1 になる関係なので、片方が下がれば他方は上がります。両方を下げたければ、回数を増やしたうえで棄却の規則を組み直すことになります。3回という回数そのものが、この検定の粗さの原因です。

入門問題

全 3 問
問 1

第1種の過誤の説明として最も適切なものはどれですか。

問 2

画鋲を投げると確率 0.62 で針が上を向くとします。3回投げて「3回とも上向き」または「3回とも下向き」のときに帰無仮説 H0:p=0.62 H_0: p = 0.62 を棄却する検定を考えます。第1種の過誤の確率はいくつですか。

問 3

標本の大きさを変えずに、棄却域を狭めて帰無仮説を棄却しにくくしました。第1種の過誤の確率 α \alpha と第2種の過誤の確率 β \beta はそれぞれどう変わりますか。