母平均の検定は、母平均 がある基準値 だといえるかどうかを、手元の標本から判断します。標本平均が からずれていても、それだけで母平均が違うとは言い切れません。標本を取り替えれば標本平均も動くからです。見るべきなのは、ずれの大きさそのものではなく、そのずれが標本平均のばらつき何個ぶんにあたるかです。まず、その「何個ぶん」を測る土台になる前提と仮説を置きます。
帰無仮説 が正しいとすると、標本平均 は平均 ・分散 の正規分布に従います。したがって、ずれ をその標準偏差で割れば、ばらつき何個ぶんかを表す1つの数に直せます。これが検定統計量で、割る相手に母分散 を使えるかどうかで形も従う分布も変わります。
| 母分散 | 検定統計量 | 帰無分布 | 自由度 |
|---|---|---|---|
| 既知 | 標準正規分布 | — | |
| 未知 | t分布 |
検定統計量が出たら、帰無仮説を捨てる基準として先に決めておいた有意水準 と照らし合わせます。両側検定の棄却域は 0 を挟んで 、片側検定なら対立仮説の向きの裾だけに と置きます(両側検定と片側検定)。p値 で比べても結論は同じで、両側検定では片側の裾の面積を2倍した値を と比べます。
棄却できなかったからといって、母平均が に等しいと示されたわけではありません。母平均が から離れていても、標本の大きさが小さければ検定統計量が棄却域まで届かないことは普通に起こります(検出力)。検定から言えるのは「 からのずれを偶然では説明しにくい」か「そこまでは言えない」かの二択で、後者は判断の保留にあたります(第1種の過誤と第2種の過誤)。
ある観測地点の3月の朝の気温は、長年の平均が 5 ℃ です。今年の3月から無作為に選んだ9日の気温は 3, 5, 6, 7, 8, 8, 8, 9, 9(℃)でした。気温は正規分布に従うものとし、母分散は分かっていません。今年の平均が例年と違うといえるかを、両側検定で調べます。
仮説は 、 です。9日の合計は 63 ℃ なので標本平均は ℃。偏差 の2乗和は 32 で、不偏分散は 、その平方根が ℃ になります。
自由度は 。この を、有意水準ごとの境界と並べます。
| 有意水準(両側) | 棄却域の境界 | との比較 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 5% | 2.306 | 棄却する | |
| 1% | 3.355 | 棄却しない |
有意水準 5% なら棄却され、1% なら棄却されません。両側のp値は約 0.017 で、0.01 < 0.017 < 0.05 という位置にあることが、この2行の判定と同じ内容を表しています。
母分散が分かっていない正規母集団から大きさ 10 の標本を取り、母平均を検定します。検定統計量が従う分布はどれですか。
正規母集団から大きさ 9 の標本を取り、標本平均 8、不偏分散 9 を得ました。 を検定するときの の値はいくつですか。
母分散が未知の正規母集団から大きさ 9 の標本を取り、両側検定を行ったところ でした。、 とするとき、判定として正しいものはどれですか。
有意水準 5% の母平均の検定で、帰無仮説を棄却できませんでした。この結果の読み方として適切なものはどれですか。