受信するメールの20%が迷惑メールだと分かっているとします。ある語句を含む割合は、迷惑メールでは80%、通常メールでは20%です。いま届いた1通がその語句を含んでいました。これは迷惑メールでしょうか。
手元にあるのは「迷惑メールのうち語句を含む割合」、知りたいのは「語句を含むメールのうち迷惑メールの割合」です。条件付き確率 の向きがちょうど逆になっています。この向きを入れ替える関係がベイズの定理です。
分子は 乗法定理 そのもので、A と B がともに起こる確率です。分母は「B が起こる確率」を、A 由来のぶんと A でない由来のぶんに分けて足し上げたもので、全確率の公式と呼ばれます。つまりこの式は、B が起きた世界を分母に据え直し、そのうち A 由来が占める割合を測っています。
式のままだと込み入って見えるので、割合を離れて実際の通数で数えるのが近道です。受信メールを1000通として、上の割合を通数に直してみます。

語句を含むメールは 通あり、そのうち迷惑メールは160通。答えは です。式で書けば で、当然ながら同じ値になります。
「迷惑メールの80%が語句を含むのだから、語句があれば80%の確率で迷惑メールだ」と答えたくなります。しかし迷惑メールはもともと2割しかありません。残り8割の通常メールでは語句を含む割合が20%でも、該当する通数は迷惑メールと同じになります。そのため答えは半々まで下がりました。事前確率を無視すると、通常メールの多さが答えをどう変えるかを見落とします。
あるクッキー店は、箱を工場Aから70%、工場Bから30%仕入れています。箱にカモノハシの絵が入っている割合は、工場Aでは2%、工場Bでは8%です。無作為に選んだ1箱に絵が入っていました。この箱が工場A製である確率を求めます。
絵が入る割合はBのほうが4倍も高いので、B製だろうと考えたくなります。ところが仕入れの数がまるで違います。仕入れの割合と絵が入る割合を掛けて、それぞれの寄与を出してみます。
| 仕入れの割合 | 絵が入る割合 | 絵入りへの寄与 | |
|---|---|---|---|
| 工場A | 0.70 | 0.02 | 0.014 |
| 工場B | 0.30 | 0.08 | 0.024 |
絵入りの箱は全体の を占め、そのうち工場A由来は 0.014 ぶんです。したがって求める確率は 、およそ37%となります。
絵を見る前は「工場A製である確率70%」でした。絵を見たあとは37%まで下がっています。B製である確率のほうが高くなったわけですが、B製と言い切れるほどではありません。証拠は確率を書き換えるだけで、白黒を付けるものではない——ベイズの定理が示しているのはその手続きです。
ベイズの定理を使う場面として、最も適切なものはどれですか。
受信メールの30%が迷惑メールです。ある語句を含む割合は、迷惑メールでは60%、通常メールでは10%です。語句を含むメールが迷惑メールである確率に最も近いものはどれですか。
ある店で売るりんごの60%はA農園(傷のあるものが1%)、40%はB農園(傷のあるものが4%)から仕入れています。無作為に選んだ1個に傷があったとき、それがB農園産である確率に最も近いものはどれですか。
ある検査は、対象の性質を持つものの95%を正しく陽性と判定します。この検査で陽性が出たとき、その対象がその性質を持つ確率について正しい説明はどれですか。