ひよこ統計

乗法定理

統計検定2級

2つの事象がともに起こる確率を、片方の確率と、それが起こったもとでのもう片方の 条件付き確率 の積で組み立てる——この関係を乗法定理といいます。

P(A∩B)=P(A) P(B∣A)=P(B) P(A∣B)P(A \cap B) = P(A) \, P(B \mid A) = P(B) \, P(A \mid B)
P(A∩B) P(A \cap B) :A と B がともに起こる確率、P(B∣A) P(B \mid A) :A が起こったという条件のもとで B が起こる確率

最初の分解は P(A)>0 P(A)>0 のとき、条件付き確率の定義 P(B∣A)=P(A∩B)P(A) P(B \mid A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} の両辺に P(A) P(A) を掛けたものです。同様に、後の分解で P(A∣B)P(A \mid B) を使うには P(B)>0P(B)>0 が必要です。確率0の事象を条件とする比による条件付き確率は定義できません。

そのため、樹形図の枝をたどる計算はすべて乗法定理です(樹形図)。1段目の枝の確率に、その枝の先での2段目の確率を掛ける、という手順がそのまま P(A)P(B∣A) P(A) P(B \mid A) にあたります。

A と B が独立で P(A)>0P(A)>0 なら P(B∣A)=P(B) P(B \mid A) = P(B) なので、式は P(A∩B)=P(A)P(B) P(A \cap B) = P(A) P(B) に縮みます。積による独立の定義 P(A∩B)=P(A)P(B)P(A \cap B)=P(A)P(B) 自体は、確率0の事象にも使えます。

上の式には P(A)P(B∣A) P(A) P(B \mid A) と P(B)P(A∣B) P(B) P(A \mid B) の2通りの分解があり、値はどちらでも同じです。実際の計算では、手元で分かっている確率のほうを先に置くと手数が減ります。

受講と合格を段階に分けて掛ける

ある検定試験の受験者のうち、対策講座を受講したのは20%でした。合格率は、受講した人では70%、受講しなかった人では30%です。受験者から1人を無作為に選んだとき、その人が「対策講座を受講し、かつ合格した」確率を求めます。

分かっているのは受講率 P(受講)=0.2 P(\text{受講}) = 0.2 と、受講したという条件のもとでの合格率 P(合格∣受講)=0.7 P(\text{合格} \mid \text{受講}) = 0.7 です。この向きで分解すればよいので 0.2×0.7=0.14 0.2 \times 0.7 = 0.14 、14%となります。

ここで 0.7 をそのまま答えにしないことです。0.7 は受講者のなかでの割合であって、受験者全体のなかでの割合ではありません。受験者全体を見渡した割合にするには、受講者が2割しかいないことを掛け合わせる必要があります。

同じ要領で「受講せず、かつ合格した」確率は 0.8×0.3=0.24 0.8 \times 0.3 = 0.24 です。合格者は全体の 0.14+0.24=0.38 0.14 + 0.24 = 0.38 にあたる、と道筋が延びていきます。このように場合を尽くして足し上げる形を全確率の公式といい、ベイズの定理 の分母はまさにこれです。

段階が3つに伸びても同じこと

6枚のカードのうち2枚が当たりです。3人が順に1枚ずつ引き、引いたカードは戻しません。3人とも外れる確率を求めます。

1人目が外れる確率は、外れが4枚あるので 46 \frac{4}{6} 。1人目が外れたという条件のもとで2人目も外れる確率は、残り5枚・外れ3枚で 35 \frac{3}{5} 。2人続けて外れたなら、3人目は残り4枚・外れ2枚で 24 \frac{2}{4} です。掛け合わせて 46×35×24=24120=15 \frac{4}{6} \times \frac{3}{5} \times \frac{2}{4} = \frac{24}{120} = \frac{1}{5} 。

段階が増えても、直前までの結果を条件に入れた確率を次々に掛けていくだけです。分母も分子も1枚ずつ減っていくところが、独立な場合との違いになります。もしカードを戻すなら3回とも 46 \frac{4}{6} のままなので (46)3=827 \left( \frac{4}{6} \right)^3 = \frac{8}{27} となり、答えは変わります。

入門問題

全 4 問
問 1

P(B)=0.5 P(B) = 0.5 、P(A∣B)=0.4 P(A \mid B) = 0.4 のとき、P(A∩B) P(A \cap B) はどれですか。

問 2

ある部品がA工場で作られる確率は 0.4 で、A工場製の部品の不良率は 0.05 です。無作為に選んだ1個が「A工場製かつ不良品」である確率はどれですか。

問 3

8個のうち3個が当たりの品が入った箱から、戻さずに2個続けて取り出します。2個とも当たりである確率はどれですか。

問 4

P(A)>0P(A)>0 とします。乗法定理 P(A∩B)=P(A)P(B∣A) P(A \cap B) = P(A) P(B \mid A) は、A と B が独立であるときどのような形になりますか。