みかんを5個だけ量って重さの平均を出すと、その値は取り直すたびに大きく振れます。では 50 個、500 個と増やしていったら、どうなるか。個数を増やすほど、出てくる平均は母平均のすぐ近くに集まっていきます。
この「標本を大きくしていけば母数に近づく」という性質を一致性といい、一致性を持つ推定量を一致推定量と呼びます。近づくといっても推定量は確率変数ですから、近づき方も確率で述べます。母数とのずれをどれだけ小さく取っても、それ以上に外れる確率が 0 へ向かう、という形です。
一致性があるからといって、手元の標本で母数を当てられるわけではありません。近づくのは を大きくしていったときの話で、有限の標本では相応に外れます。むしろ一致性は推定量に求める最低条件と考えるのが実際に近く、これを満たさない推定量は、どれだけ手間をかけて標本を集めても報われません。
一致性の定義自体は推定量列の確率収束についてのものです。独立同分布の無作為標本で母分散が有限なら、 から標本平均が母平均の一致推定量だと示せます。
不偏性と一致性は別の軸です。独立同分布標本で必要な有限モーメント条件のもとでは、 で割る標本分散は不偏でなくても一致性をもちます。一方、最初の1個だけを使う推定量は不偏でも一致しません。
母分散4の同じ分布から独立に抽出したみかんの重さについて、標本平均のばらつきが とともにどう縮むかを並べます。
| 標本の大きさ | 1 | 4 | 25 | 100 |
|---|---|---|---|---|
| 標本平均の分散 | 4 | 1 | 0.16 | 0.04 |
| 標本平均の標準偏差(g) | 2 | 1 | 0.4 | 0.2 |
この縮み方を確率の言葉に直してみます。母平均から 1 g 以上ずれる確率は、チェビシェフの不等式 を使えば分散を で割った値で押さえられるので、 では 以下。同じ計算を でやると で、上限が 1 では何も言えていません。 を増やすほどこの上限は 0 へ向かい、どれだけ小さいずれ幅を持ち出しても同じことが起こります。これが一致性の中身です。
次に、不偏でない推定量が一致性を持つ場合を確かめます。 で割った標本分散 の期待値は で、母分散の 倍()にとどまります。ところが なら 倍、 なら 0.999 倍。平均的にずれているのに、標本を大きくすればそのずれは消えていきます。倍率が 1 に近づくだけでなく、この量自身のばらつきも とともに縮んでいくので、母分散のまわりへ押し込まれていきます。
反対の組み合わせも作れます。標本の最初の1個 をそのまま母平均の推定量に使うと、 なので不偏です。しかし の分散は をどれだけ増やしても のままで、上の表の一番左の列に居座り続けます。みかんを500個量っても2個目以降を捨てているのだから当然で、これは一致性を持たない推定量です。
推定量が一致性を持つとは、どういうことですか。
有限な母分散をもつ分布から独立同分布標本を取ります。偏差の2乗和を で割った標本分散について正しいものはどれですか。
有限な母平均をもつ同じ分布から独立に抽出するとき、大数の法則と一致性の関係として正しいものはどれですか。
母分散が 4 の母集団から標本を取ります。標本の大きさを 25 から 100 へ 4 倍にすると、標本平均の標準偏差は何倍になりますか。