サイコロを振る回数に上限はありません。何度でも振れるので、目の出方の全体は「いくらでも取り出せるもの」として考えます。ところが、ある会社の職員は 4000 人と数が決まっています。
要素の個数が有限で数え上げられる 母集団 ——これが有限母集団です。いくらでも取り出せると考えるほうは無限母集団と呼び、両者を区別します。
有限母集団から同じ要素を2度選ばない単純無作為抽出をすると、標本値は独立ではありません。この抽出設計での標本平均の分散は次の形です。他の抽出法では、その設計に応じた分散式が必要です。
後ろに付いた を有限母集団修正といいます。 が 2 以上なら 1 より小さくなるので、標本平均のばらつきは、同じものを選び直しながら取る場合(復元抽出)より小さくなります。極端な場合を見ると納得しやすく、、つまり 全数調査 にすると修正は 0 になり、ばらつきは消えます。全員を調べたのだから標本平均は母平均そのもので、これは当然の帰結です。
逆に が に比べて小さければ、修正はほぼ 1 になり、無視して構いません。標本調査 の精度が母集団の大きさではなく 標本の大きさ で決まるという説明は、この修正による差がほとんどない範囲で成り立ちます。
標本平均の期待値・分散 で使ったのと同じ、2, 4, 6, 8 の4つの数だけからなる母集団で確かめます。母平均は 、母分散は です。ここから2つを、同じものを2度選ばないように取り出します。
取り方は6通りで、それぞれの標本平均は 3, 4, 5, 5, 6, 7 になります。この6つの平均は 5 で母平均と一致し、偏差 から分散は です。
式のほうも合わせてみます。・・ なので 。一致しました。同じ母集団を戻しながら取ったときの分散は でしたから、戻さないほうがばらつきは小さいことになります。1つ目に大きい数が出れば2つ目は小さい数が出やすくなる——値どうしが打ち消し合う向きに結びつくため、平均は中央に寄りやすくなります。
では冒頭の会社ではどうなるか。職員 4000 人から 400 人を選ぶ場合、修正は 。この値は分散を 0.900 倍にし、ばらつきの目安である標準偏差をその平方根の 0.949 倍にします。つまり標準偏差が約5%小さくなるだけです。抽出率()は 10% でも、精度の改善はこの程度にとどまります。
次のうち、有限母集団にあたるものはどれですか。
有限母集団から同じ相手を2度選ばずに標本を取るとき、 とすると有限母集団修正 はどうなりますか。
有限母集団から単純無作為・非復元抽出するとき、有限母集団修正を無視してよいのはどのような場合ですか。