ひよこ統計

指数分布

統計検定2級

幾何分布 は「初めて成功するまでの回数」を扱いました。では、回数ではなく時間を測るとどうなるでしょうか。次の来客まで何分か、部品が壊れるまで何時間か。この待ち時間が従うのが指数分布で、幾何分布を連続量に置き換えたものにあたります。

できごとが一定率で独立に発生するポアソン過程では、一定時間内の回数は ポアソン分布、発生間隔は指数分布に従います。密度と要約量は次のとおりです。

f(x)=λe−λx(x≥0),E(X)=1λ,V(X)=1λ2f(x) = \lambda e^{-\lambda x} \quad (x \ge 0), \qquad E(X) = \frac{1}{\lambda}, \qquad V(X) = \frac{1}{\lambda^2}
λ \lambda :単位時間あたりに起こる平均回数(頻度)、x x :次に起こるまでの待ち時間
2枚並んだ図。左は指数分布の密度曲線を λ=0.5、1.0、2.0 の3本重ねたもので、いずれも x=0 で最も高く右へ減っていき、λ が大きいほど始まりが高く落ち方が急になっている。右は λ=1 の密度を実線で、2 まで待ったあとの残り時間の密度を破線で描いたもので、破線は x=2 から始まって実線とまったく同じ形をしている。
指数分布の密度(左)と、無記憶性のあらわれ方(右)

左の図のとおり、密度は x=0 x = 0 で最も高く、そこから減り続けます。短い待ち時間ほど起こりやすいということで、これは幾何分布で「1回目の成功が最も起こりやすい」だったのと同じ形です。期待値 1λ \frac{1}{\lambda} も、幾何分布の 1p \frac{1}{p} にきれいに対応しています。

そして幾何分布と同じく、指数分布も無記憶性をもちます。すでに s s だけ待ったという条件のもとで、さらに t t 以上待つ確率は、はじめから t t 以上待つ確率と変わりません。

P(X>s+t∣X>s)=P(X>t)P(X > s + t \mid X > s) = P(X > t)

右の図がそれを示しています。2まで待ったあとの残り時間の分布(破線)は、始点がずれているだけで、はじめの分布(実線)とまったく同じ形です。待った時間は、次に起こるまでの見通しを1ミリも変えません。

無記憶性は、寿命を指数分布で表すことの限界でもあります。「10年使った機械が、さらに1年もつ確率は、新品が1年もつ確率と同じ」ということになってしまうからです。摩耗して壊れやすくなる部品には当てはまりません。指数分布が向くのは、劣化ではなく偶発的な原因で起こることがらです。電子部品の突発故障や、窓口への到着間隔がこれにあたります。

ある窓口に、平均して1時間に2人が一定率で独立に訪れるポアソン過程を仮定します。次の人までの待ち時間 X X (時間)は λ=2 \lambda = 2 の指数分布に従います。

平均の待ち時間は 12=0.5 \frac{1}{2} = 0.5 時間、つまり30分。1時間に2人なら1時間に2人なら30分に1人、という当たり前の値です。標準偏差も 14=0.5 \sqrt{\frac{1}{4}} = 0.5 時間で、期待値と一致します(指数分布ではつねにそうなります)。

「30分以上待つ」確率を求めてみます。x x 以上待つ確率は密度を積分して e−λx e^{-\lambda x} となるので、e−2×0.5=e−1=0.368 e^{-2 \times 0.5} = e^{-1} = 0.368 。平均が30分なのに、30分以上待つ確率は半分ではなく約37%しかありません。短い待ち時間ほど起こりやすいぶん、平均より下に入ることのほうが多いためです。

無記憶性も数字で見ておきます。すでに30分待ったとして、さらに30分以上待つ確率は P(X>1)P(X>0.5)=e−2e−1=e−1=0.368 \frac{P(X > 1)}{P(X > 0.5)} = \frac{e^{-2}}{e^{-1}} = e^{-1} = 0.368 。最初の30分とまったく同じ値に戻りました。

この性質は、同じ現象を回数で見るか間隔で見るかという対応から出てきます。1時間あたり2人が ポアソン分布 に従って訪れるなら、ある30分間に誰も来ない確率は λ=1 \lambda = 1 として e−1=0.368 e^{-1} = 0.368 。指数分布で「30分以上待つ」と言っているのは、その30分間の到着回数が0だと言っているのと同じことです。どの30分を切り取っても回数の分布が変わらない以上、待ち時間の分布も変わりようがありません。

入門問題

全 4 問
問 1

λ=2 \lambda = 2 の指数分布に従う待ち時間の期待値はどれですか。

問 2

指数分布に従う待ち時間について、すでに30分待ったとき、さらに30分以上待つ確率はどうなりますか。

問 3

できごとが一定率で独立に発生するポアソン過程で、できごとどうしの間隔が従う分布はどれですか。

問 4

機械の寿命を指数分布で表すことの限界として、最も適切な指摘はどれですか。