ひよこ統計

幾何分布

統計検定2級

当たる確率が 110 \frac{1}{10} のくじを、毎回もとに戻しながら引き続けます。初めて当たるのは何回目でしょうか。2回目かもしれないし、20回目まで引くはめになるかもしれません。この「初めて成功するまでの回数」が従う分布が幾何分布です。

k k 回目で初めて成功するには、1回目から k−1 k-1 回目まで失敗し続け、k k 回目に成功すればよい。ベルヌーイ試行 を独立に繰り返しているので、確率は掛け算だけで出ます。

P(X=k)=(1−p)k−1 p(k=1,2,3,…)P(X = k) = (1-p)^{k-1} \, p \qquad (k = 1, 2, 3, \ldots)
p p :1回あたりの成功確率、k k :初めて成功した回数

k k が増えるほど (1−p)k−1 (1-p)^{k-1} が小さくなるので、確率は一方的に減っていきます。つまり最も起こりやすいのは1回目で成功することで、そこから右へ長い裾を引く形です。期待値と分散は次のようになります。

E(X)=1p,V(X)=1−pp2E(X) = \frac{1}{p}, \qquad V(X) = \frac{1-p}{p^2}

期待値 1p \frac{1}{p} は直感どおりの値です。10回に1回当たるくじなら平均10回で当たる。ただし最も起こりやすいのは1回目なので、平均と最頻値がまるで違うという、左右対称な分布では起こらないことが起きています。

幾何分布は無記憶性をもちます。すでに n n 回外し続けたという条件のもとで、さらに k k 回より多く外す確率は、何もない状態から k k 回より多く外す確率と等しい——式で書けば P(X>n+k∣X>n)=P(X>k) P(X > n+k \mid X > n) = P(X > k) です。「そろそろ当たるはずだ」という感覚に真っ向から反しますが、毎回もとに戻している以上、くじの側は過去を覚えていません。

当たる確率 p=110 p = \frac{1}{10} のくじを、毎回もとに戻して引きます。何回目で初めて当たるかの確率を、はじめのほうだけ並べてみます。

k 回目12345
P(X=k) P(X = k) 0.1000.0900.0810.0730.066

たとえば3回目で初めて当たる確率は (910)2×110=0.081 \left( \frac{9}{10} \right)^2 \times \frac{1}{10} = 0.081 。1回目がいちばん高く、あとは9割ずつ掛け算で減っていきます。期待値は 10.1=10 \frac{1}{0.1} = 10 回ですが、10回目の確率は 0.039 しかありません。平均は「よくある値」ではなく、長い裾に引っ張られた重心だということです。

ここで無記憶性を確かめます。5回引いて全部外れたとしましょう。「もう5回ぶん外したのだから、そろそろ当たるはずだ」と考えたくなります。ところが、いまから当たるまでに引く回数の期待値は 10.1=10 \frac{1}{0.1} = 10 回のまま。最初に立っていた地点とまったく同じです。

5回ぶん引いたのだから残りは減るはず、と考えるのが定番の誤りです。減るのは「あと何回で当たるか」の残り回数ではなく、単に手元の資金や時間のほうです。くじを戻している以上、5回の外れは次の1回に何の影響も与えていません。

入門問題

全 4 問
問 1

成功確率が p=14 p = \frac{1}{4} の試行を繰り返すとき、初めて成功するまでの回数の期待値はどれですか。

問 2

当たる確率が 15 \frac{1}{5} のくじを毎回もとに戻して引くとき、3回目で初めて当たる確率を表す式はどれですか。

問 3

さいころを繰り返し投げ、1の目が出たら終わりとします。すでに4回投げて1の目が出ていないとき、いまから終わるまでに投げる回数の期待値はどれですか。

問 4

幾何分布 P(X=k)=(1−p)k−1p P(X = k) = (1-p)^{k-1} p について、確率が最も大きくなるのはどの k k のときですか。