偏差は、各データが平均からどれだけ離れているかを表す値です。データから平均を引くだけで求まります。
平均より大きければ正、小さければ負になり、絶対値がそのまま離れ具合を表します。単位はもとのデータと同じままなので、値をそのまま読めます。
この単純な値には、少し意外な性質があります。偏差をすべて足すと、どんなデータでも必ず 0 になるのです。偏差の合計は「データの合計から、平均を個数ぶん足したものを引いた値」ですが、データの合計はもともと「平均 × 個数」に等しいので、両者が打ち消し合います。
平均が全体をならした値である以上、これは避けられません。したがって、偏差をそのまま平均しても散らばりは測れません。分散 が偏差を2乗してから平均するのは、この 0 を避けるためです。
符号を消すだけなら、絶対値をとって平均する方法(平均偏差)もあります。それでも2乗が使われるのは、大きく外れた値をより強く反映できることに加え、標準偏差 や 相関係数 のように後から積み上がる理論が、2乗の形を土台にしているからです。
もう1つ、全員のデータに同じ数を足しても偏差は変わりません。平均も同じだけ動くので、両者の差は据え置かれます。分散・標準偏差・相関係数が定数の加算で変わらないのは、すべてここに由来します。
5人が計算テスト(20点満点)で 3, 5, 6, 8, 8 点を取りました。平均は 点です。
| Aさん | Bさん | Cさん | Dさん | Eさん | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 点数(点) | 3 | 5 | 6 | 8 | 8 | 30 |
| 偏差 | −3 | −1 | 0 | 2 | 2 | 0 |
右端の列のとおり、偏差の合計は 0 です。DさんとEさんの正の偏差を、AさんとBさんの負の偏差がちょうど打ち消しています。
次に、採点の修正で全員に5点を加えます。点数は 8, 10, 11, 13, 13 点、平均は 点に上がりました。
| Aさん | Bさん | Cさん | Dさん | Eさん | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 点数(点) | 8 | 10 | 11 | 13 | 13 | 55 |
| 偏差 | −3 | −1 | 0 | 2 | 2 | 0 |
偏差は5人とも同じ値のままです。全員が同じだけ移れば、平均との位置関係は変わりません。点数そのものは上がっても、散らばり方は何も動いていない、ということです。
あるデータの偏差をすべて足すと、合計はいくつになりますか。
平均が 12 のデータで、値が 9 であるデータの偏差はいくつですか。
分散が、偏差をそのまま平均せずに2乗してから平均するのはなぜですか。