2台の機械が同じ製品を作っているとして、寸法のばらつきに差があるかを調べたいとします。中心の位置を比べるなら差を見ますが、散らばりを比べるときは比を見ます。分散は 0 以上の量で、2倍・3倍という倍率のほうが意味を持つからです。
そこで、独立な2つの カイ二乗分布 に従う量をそれぞれの自由度で割り、その比をとります。この比が従う分布を、自由度 のF分布といい と書きます。
自由度で割ってから比をとるのは、カイ二乗分布の期待値が自由度そのものだからです。あらかじめ自由度で割っておけば、どちらの期待値も 1 のあたりに揃い、比が 1 から離れているかどうかで判断できるようになります。
ここまでの3つの分布は、いずれも 標準正規分布 から組み立てられています。作り方を並べると、互いの関係が見えます。
F分布の自由度が2つ組であることには意味があります。分子側と分母側は入れ替えられないので、 と は別の分布です。順序を逆に書くと、F分布表 のまったく違う欄を読むことになります。
数表には上側の点しか載っていないのが普通ですが、下側の点は自由度を入れ替えた上側の点から求められます。比の分子と分母を入れ替えることは、逆数をとることにほかならないからです。左辺の添字 は上側確率が であることを表し、 なら下側 5% の点にあたります。
t分布との間にも関係があります。t分布に従う量を2乗すると、分子が1個の標準正規分布の2乗、つまり自由度1のカイ二乗になるので、 は に従います。t分布の数表しか手元にないとき、この関係でF分布の 上側確率点(パーセント点) を作れます。
互いに独立な正規母集団である機械Aと機械Bから、それぞれ 8 個と 10 個を無作為に取り出しました。不偏分散は 、 です。帰無仮説 のもとでは、比 は自由度 のF分布に従います。ここでは対立仮説を とする上側片側検定を考えます。
実際の比は です。自由度 のF分布の上側5%点は 3.29 なので、4.0 はその外側に出ています。上側片側5%検定では帰無仮説を棄却し、機械Aの母分散が機械Bより大きいと判断します。
ここで機械Bを分子に置いて としてしまうと、自由度も に変わり、比べる相手は下側の点になります。分子・分母のどちらを上に置いたかと、自由度をどちらの順に書いたかは、必ず一致させます。
自由度5のt分布の上側2.5%点は 2.571 です。 は に従い、2乗すると符号が消えて左右両側が重なるので、上側 2.5% と下側 2.5% を合わせた 5% がそのまま の上側確率になります。
したがって の上側5%点は 。F分布の数表を引かずに、t分布の数表1つで同じ値が得られました。片側と両側の対応がそのまま2乗の関係に化けている、と見ると覚えやすくなります。
F分布に従う量の作り方として正しいものはどれですか。
互いに独立な正規母集団から大きさ 10 と大きさ 7 の標本を取り、不偏分散を求めて前者を分子にした比をとりました。帰無仮説として2つの母分散が等しいとすると、この比が従うF分布の自由度はどれですか。
自由度 のF分布の上側5%点は 6.04 です。この値から分かるものはどれですか。