ひよこ統計

F分布

統計検定2級

2台の機械が同じ製品を作っているとして、寸法のばらつきに差があるかを調べたいとします。中心の位置を比べるなら差を見ますが、散らばりを比べるときは比を見ます。分散は 0 以上の量で、2倍・3倍という倍率のほうが意味を持つからです。

そこで、独立な2つの カイ二乗分布 に従う量をそれぞれの自由度で割り、その比をとります。この比が従う分布を、自由度 (ν1,ν2) (\nu_1, \nu_2) のF分布といい F(ν1,ν2) F(\nu_1, \nu_2) と書きます。

F=U/ν1V/ν2F = \frac{U / \nu_1}{V / \nu_2}
U U :自由度 ν1 \nu_1 のカイ二乗分布に従う量(分子側)、V V :自由度 ν2 \nu_2 のカイ二乗分布に従う量(分母側)。U U と独立

自由度で割ってから比をとるのは、カイ二乗分布の期待値が自由度そのものだからです。あらかじめ自由度で割っておけば、どちらの期待値も 1 のあたりに揃い、比が 1 から離れているかどうかで判断できるようになります。

ここまでの3つの分布は、いずれも 標準正規分布 から組み立てられています。作り方を並べると、互いの関係が見えます。

F分布の自由度が2つ組であることには意味があります。分子側と分母側は入れ替えられないので、F(5,10) F(5, 10) と F(10,5) F(10, 5) は別の分布です。順序を逆に書くと、F分布表 のまったく違う欄を読むことになります。

数表には上側の点しか載っていないのが普通ですが、下側の点は自由度を入れ替えた上側の点から求められます。比の分子と分母を入れ替えることは、逆数をとることにほかならないからです。左辺の添字 1−α 1-\alpha は上側確率が 1−α 1-\alpha であることを表し、α=0.05 \alpha = 0.05 なら下側 5% の点にあたります。

F1−α(ν1,ν2)=1Fα(ν2,ν1)F_{1-\alpha}(\nu_1, \nu_2) = \frac{1}{F_{\alpha}(\nu_2, \nu_1)}

t分布との間にも関係があります。t分布に従う量を2乗すると、分子が1個の標準正規分布の2乗、つまり自由度1のカイ二乗になるので、t(ν)2 t(\nu)^2 は F(1,ν) F(1, \nu) に従います。t分布の数表しか手元にないとき、この関係でF分布の 上側確率点(パーセント点) を作れます。

機械Aの分散が大きいかを調べる

互いに独立な正規母集団である機械Aと機械Bから、それぞれ 8 個と 10 個を無作為に取り出しました。不偏分散は sA2=24.0 s_A^2 = 24.0 、sB2=6.0 s_B^2 = 6.0 です。帰無仮説 H0:σA2=σB2 H_0: \sigma_A^2=\sigma_B^2 のもとでは、比 sA2/sB2 s_A^2 / s_B^2 は自由度 (8−1, 10−1)=(7,9) (8-1, \ 10-1) = (7, 9) のF分布に従います。ここでは対立仮説を H1:σA2>σB2 H_1: \sigma_A^2>\sigma_B^2 とする上側片側検定を考えます。

実際の比は 24.0÷6.0=4.0 24.0 \div 6.0 = 4.0 です。自由度 (7,9) (7, 9) のF分布の上側5%点は 3.29 なので、4.0 はその外側に出ています。上側片側5%検定では帰無仮説を棄却し、機械Aの母分散が機械Bより大きいと判断します。

ここで機械Bを分子に置いて 6.0÷24.0=0.25 6.0 \div 24.0 = 0.25 としてしまうと、自由度も (9,7) (9, 7) に変わり、比べる相手は下側の点になります。分子・分母のどちらを上に置いたかと、自由度をどちらの順に書いたかは、必ず一致させます。

t分布の数表からF分布の点を作る

自由度5のt分布の上側2.5%点は 2.571 です。t(5)2 t(5)^2 は F(1,5) F(1, 5) に従い、2乗すると符号が消えて左右両側が重なるので、上側 2.5% と下側 2.5% を合わせた 5% がそのまま F(1,5) F(1,5) の上側確率になります。

したがって F(1,5) F(1, 5) の上側5%点は 2.5712=6.61 2.571^2 = 6.61 。F分布の数表を引かずに、t分布の数表1つで同じ値が得られました。片側と両側の対応がそのまま2乗の関係に化けている、と見ると覚えやすくなります。

入門問題

全 3 問
問 1

F分布に従う量の作り方として正しいものはどれですか。

問 2

互いに独立な正規母集団から大きさ 10 と大きさ 7 の標本を取り、不偏分散を求めて前者を分子にした比をとりました。帰無仮説として2つの母分散が等しいとすると、この比が従うF分布の自由度はどれですか。

問 3

自由度 (8,4) (8, 4) のF分布の上側5%点は 6.04 です。この値から分かるものはどれですか。