ひよこ統計

多段抽出法

統計検定2級

全国の有権者から無作為に選びたい、と思っても、全国を1本にまとめた名簿は手元にありません。あるのは市区町村ごとの名簿です。名簿が分かれているなら、抽出のほうを段に分けます。

まず市区町村を無作為に選び、選ばれた市区町村の名簿から個人を無作為に選びます。多段抽出法と呼ぶのは、このように抽出を2段階以上に重ねるやり方です。段が2つなら二段抽出法になります。

クラスター抽出法 との分かれ目は2段目にあります。あちらは選んだまとまりを丸ごと調べ、こちらはその中からさらに一部を選ぶ。おかげで調査先が散らばらない利点はそのままに、1か所あたりの人数を減らして、選ぶ地点の数を増やせます。

地点iの個人jが標本に入る一般の包含確率は、第1段の選択確率 PiP_i と、その地点が選ばれた条件での第2段確率 Pj∣iP_{j\mid i} の積です。第1段・第2段とも単純無作為抽出なら、次の形になります。

Pij=PiPj∣i=mM×niNiP_{ij}=P_i P_{j\mid i}=\frac{m}{M} \times \frac{n_i}{N_i}
m m :1段目で選ぶ地点の数、M M :1段目の候補となる地点の数、ni n_i :地点 i から選ぶ人数、Ni N_i :選ばれた地点 i にいる人数

段を増やすほど調査は身軽になりますが、そのたびに抽出の運が1つ乗るので、標本誤差 は同じ 標本の大きさ の単純無作為抽出より大きくなりがちです。費用と精度を引き換えにしている、という前提の上に成り立つ方法です。

県内の高校100校から10校を無作為に選び(1段目)、選ばれた各校の名簿から30人ずつを無作為に選ぶ(2段目)とします。標本の大きさは 10×30=300 10 \times 30 = 300 人、訪問先は10校です。

生徒数300人のA校にいる生徒が標本に入る確率は 10100×30300=1100 \frac{10}{100} \times \frac{30}{300} = \frac{1}{100} 。ところが生徒数1200人のB校では 10100×301200=1400 \frac{10}{100} \times \frac{30}{1200} = \frac{1}{400} になります。同じ手続きなのに、大きな学校の生徒は4分の1しか選ばれません。

原因は2段目にあります。学校の大きさが違うのに、どの学校からも同じ30人を選んだためです。全員の確率を揃えるには、2段目の人数を学校の大きさに比例させる(A校から10人・B校から40人のように取る)か、1段目で学校の大きさに比例した確率で選んでおいて、2段目は一律30人にします。こうすると2つの確率の積が学校の大きさに依存しなくなります。

後者を選ぶことが多いのは、1校あたりの人数が揃っていたほうが調査の段取りを組みやすいからです。いずれにせよ、確率を揃える調整を入れなければ、集計の段階で重みを付け直すことになります。

入門問題

全 3 問
問 1

全国規模の世論調査で多段抽出法が使われる主な理由はどれですか。

問 2

20校から4校を無作為に選び、選ばれた各校(いずれも児童300人)から15人ずつを無作為に選びます。ある児童が標本に入る確率はいくつですか。

問 3

同じ標本の大きさで、単純無作為抽出のかわりに多段抽出法を使うと、どうなりますか。