ある市の高校生全員を 母集団 として、100人ずつを3回にわたって 無作為抽出 で選び、そのつど数学のテストの平均点を計算しました。母平均は 61.0 点だったとします。
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | |
|---|---|---|---|
| 標本平均(点) | 62.4 | 59.8 | 61.3 |
3つとも 61.0 からずれており、しかも互いに違います。どれかが間違っているわけではなく、3回とも正しく計算した結果です。母集団の一部だけを調べたために生じる、標本から計算した値と母集団の値とのずれを標本誤差といいます。
原因は選び方の失敗ではなく、どの100人が選ばれたかという偶然です。だから向きも決まっておらず、上の例のように母平均より高く出ることも低く出ることもあります。そして偶然に由来するからこそ、消せないかわりに大きさのほうは前もって見積もれます。
独立同分布標本、または抽出率を無視できる単純無作為抽出では、標本平均の 標準誤差 は母標準偏差を標本の大きさの平方根で割った値になります。
有限母集団Nから非復元抽出する場合は、さらに有限母集団修正 を掛けます。抽出率が小さければこの係数はほぼ1です。
標本の選び方や答えの得られ方から生じるずれは、標本誤差とは別の 偏りの源 として扱います。両者は性質が正反対で、標本誤差は向きが決まっておらず、標本を大きくすれば小さくなります。いっぽう偏りは決まった方向へ寄り続けるため、大きくしても消えません。「誤差の範囲だから問題ない」と言えるのは、前者についてだけです。
世論調査 の記事に「誤差は上下3ポイント程度」と添えられているのは、この標本誤差の目安です。気をつけたいのは2つの調査を比べるときで、どちらの結果にも幅がある以上、差に付く幅は片方の ±3 ポイントよりさらに大きくなります。支持率が 42% から 44% へ動いたと報じられても、それだけで世論が動いたと読むには足りません。
賛成・反対を尋ねる調査で、母集団の賛成割合がちょうど 0.5 だとします。ここから 人を無作為に選んだときの標本比率が、どれくらい動くかを計算します。比率の場合、標本比率の散らばりは で求められます。
400人なら 、つまり 2.5%。その約1.96倍を見込むと、標本比率のずれはおおむね ポイントの範囲に収まります。「賛成が50%だった」という結果には、45%から55%ほどの幅が付いてまわるということです。
1000人にすると 、幅はおよそ ポイントに縮みます。世論調査でよく見る「±3ポイント」は、回答者数が1000人前後であることから来ています。
人数を2.5倍にして、幅は4.9から3.1ポイントへ。半分にすらなりません。ここでもし ポイントまで詰めたければ、 を解いて 、およそ 1万人 が必要です。1ポイント差を語るために10倍の人数を集めるのが割に合うかは、調査の目的しだいでしょう。
なお、この計算はすべて無作為抽出が守られている前提で成り立ちます。答えたい人だけが答えた調査では、人数をいくら増やしてもこの幅の中に真の値が入る保証はありません。
同じ母集団から無作為に100人ずつを3回選び、平均を計算したところ 62.4 点、59.8 点、61.3 点となりました。3つの値が食い違う主な理由はどれですか。
賛成割合が 0.5 の母集団から1000人を無作為に選ぶと、標本比率の散らばりは です。その約1.96倍を幅とみなすと、標本比率はおよそ何ポイントの範囲で動きますか。
調査で生じる次のずれのうち、標本誤差にあたるものはどれですか。