ひよこ統計

確率変数の和と差(同時分布,和の期待値・分散)

統計検定2級

2つの確率変数を足したら、平均と散らばりはどうなるでしょうか。各期待値が有限に存在するなら、和の期待値はそれぞれの期待値の和になります。独立性は必要ありません。

E(X+Y)=E(X)+E(Y)E(X + Y) = E(X) + E(Y)

ところが分散はそうはいきません。2つの変数が連動していれば、片方が大きいときもう片方も大きくなり、和のぶれは単純な足し算より大きくなります。その連動ぶんを持ち込むのが 共分散 です。

V(X+Y)=V(X)+V(Y)+2 Cov(X,Y),V(X−Y)=V(X)+V(Y)−2 Cov(X,Y)V(X + Y) = V(X) + V(Y) + 2\,\mathrm{Cov}(X, Y), \qquad V(X - Y) = V(X) + V(Y) - 2\,\mathrm{Cov}(X, Y)
Cov(X,Y) \mathrm{Cov}(X, Y) :X と Y の共分散。連動のぐあいを表す

X X と Y Y が 独立 であれば共分散は 0 なので、この項は消えます。すると和でも差でも V(X)+V(Y) V(X) + V(Y) で、どちらも足し算になります。

ここで、差をとったのだから分散も引き算だ、と考えたくなりますが誤りです。−Y -Y の分散は (−1)2V(Y)=V(Y) (-1)^2 V(Y) = V(Y) で、符号を変えても散らばりは変わりません。引き算をしたぶんだけ不確かさが減る、ということは起こらず、むしろ2つぶんの誤差が重なります。

背景にあるのは同時分布です。一般にXとYが独立とは、すべての実数x, yについて P(X≤x,Y≤y)=P(X≤x)P(Y≤y)P(X\le x, Y\le y)=P(X\le x)P(Y\le y) と分解できることです。離散型では各点で P(X=x,Y=y)=P(X=x)P(Y=y)P(X=x,Y=y)=P(X=x)P(Y=y)、連続型で同時密度がある場合は密度の積への分解で判定できます。

定数倍と定数の足し算については、次のように振る舞います。V(aX+b)=a2V(X) V(aX + b) = a^2 V(X) 。平行移動 b b は散らばりを変えず、a a 倍に拡大すると分散は a2 a^2 倍になります。これを組み合わせれば、たいていの線形な組合せの分散は計算できます。

差をとっても誤差は重なる

ある家庭の電気料金は、去年ぶんも今年ぶんも平均・標準偏差がともに 5002 500\sqrt{2} 円の 正規分布 に従い、互いに独立だとします。2年ぶんの差が800円以上になる確率を求めてみます。

差 X−Y X - Y の期待値は 5002−5002=0 500\sqrt{2} - 500\sqrt{2} = 0 。分散は独立なので足して (5002)2+(5002)2=500000+500000=1000000 (500\sqrt{2})^2 + (500\sqrt{2})^2 = 500000 + 500000 = 1000000 、標準偏差は 1000000=1000 \sqrt{1000000} = 1000 円です。

1年ぶんの標準偏差が約707円だったのに対し、差の標準偏差は1000円まで広がりました。差をとると振れ幅が小さくなりそうに思えますが、実際には 2 \sqrt{2} 倍に広がっています。あとは標準化して Z=800−01000=0.8 Z = \frac{800 - 0}{1000} = 0.8 、表から P(Z≥0.8)=0.212 P(Z \ge 0.8) = 0.212 です。

連動していれば分散は変わる

今度は独立でない場合を見ます。V(X)=4 V(X) = 4 、V(Y)=9 V(Y) = 9 として、共分散が 0 のとき・正のとき・負のときで和の分散を並べます。

Cov(X, Y)V(X+Y) V(X+Y) V(X−Y) V(X-Y)
0(独立など)1313
+3197
−3719

共分散が正、つまり一緒に大きくなる関係なら、4+9+2×3=19 4 + 9 + 2 \times 3 = 19 と和のぶれは大きくなります。いっぽう差をとれば連動ぶんが相殺されて 4+9−2×3=7 4 + 9 - 2 \times 3 = 7 まで縮みます。共分散が負なら、この大小がそっくり入れ替わります。

つまり「差をとると誤差が重なる」のは独立な場合の話で、連動している2つの差はむしろ安定します。同じ人を2回測った値の差が扱いやすいのはこのためです。

入門問題

全 4 問
問 1

互いに独立な確率変数 X X と Y Y がともに分散 16 をもつとき、V(X−Y) V(X - Y) はいくつですか。

問 2

E(X+Y)=E(X)+E(Y) E(X + Y) = E(X) + E(Y) が成り立つのはどのようなときですか。

問 3

V(X)=4 V(X) = 4 、V(Y)=9 V(Y) = 9 、Cov(X,Y)=3 \mathrm{Cov}(X, Y) = 3 のとき、V(X+Y) V(X + Y) はいくつですか。

問 4

確率変数 X X について V(3X+5) V(3X + 5) はどう表せますか。