ひよこ統計

相関係数の区間推定

統計検定2級

相関係数 は −1 と +1 の間にしか値を取れません。ここが厄介なところで、これまでのように「推定値の左右へ同じだけ足し引きする」やり方をそのまま当てると、r=0.9 r = 0.9 のようなときに上端が 1 を超えてしまいます。動ける範囲が決まっている量には、対称な区間という形自体が合っていないのです。

そこで相関係数の区間推定では、いったん r r を上下の制限のない量に置き換え、そちらで区間を作ってから相関係数の世界へ戻します。この置き換えをフィッシャーの z 変換といいます。−1 から 1 までの値を −∞ -\infty から +∞ +\infty まで広げる変換で、次の式で与えられます。

z=12log⁡1+r1−rz = \frac{1}{2}\log\frac{1 + r}{1 - r}
r r :標本相関係数、z z :変換後の値(制限なく動ける)

ここでの log⁡ \log は自然対数です。2変量正規母集団から n n 組を無作為に抽出し、組どうしを独立に扱えるとき、変換後の z z は n n がある程度大きければ標準偏差 1n−3 \frac{1}{\sqrt{n-3}} の正規分布でよく近似できます。変換によって、母相関係数 ρ \rho の大きさにかかわらず、ばらつきを n n だけで決められます。手順は3段になります。

  1. 標本相関係数 r r を z 変換する。
  2. z±1.96⋅1n−3 z \pm 1.96 \cdot \frac{1}{\sqrt{n-3}} で区間を作る(信頼係数 95% の場合)。
  3. 両端を r=e2z−1e2z+1 r = \frac{e^{2z} - 1}{e^{2z} + 1} で相関係数に戻す。

戻したあとの区間は、r r を中心に左右対称にはなりません。z の世界では対称だった区間が、戻す際に ±1 に近い側ほど強く圧縮されるからです。r r が正なら上側の幅が下側より狭くなります。これは −1≤ρ≤1 -1 \le \rho \le 1 という制約を守った結果で、計算を誤ったわけではありません。

この手順は、無作為に得た観測の組どうしが独立で、組をなす2変数が 2変量正規分布 に従うことを前提にしています。独立であるべきなのは人どうし・対象どうしの観測であり、同じ組の中の2変数ではありません。同じ組の2変数には、推定対象である相関があって構いません。また、区間が 0 を含むかどうかで「母集団に相関があるとはいえない」という判断はできますが、ここで測っているのは直線的な関係の強さだけです。区間が 0 から離れていても、因果関係 を述べたことにはなりません。

2変量正規母集団から無作為に抽出した、互いに独立な 28 組のデータから、標本相関係数 0.6 を得ました。母相関係数の 95% 信頼区間を求めます。

まず z 変換します。z=12log⁡1+0.61−0.6=12log⁡4=0.693 z = \frac{1}{2}\log\frac{1 + 0.6}{1 - 0.6} = \frac{1}{2}\log 4 = 0.693 。次に z z のばらつきは 128−3=0.2 \frac{1}{\sqrt{28 - 3}} = 0.2 なので、半幅は 1.96×0.2=0.392 1.96 \times 0.2 = 0.392 。z の区間は 0.301 から 1.085 までとなります。

最後に両端を相関係数へ戻します。下端は e0.602−1e0.602+1=0.29 \frac{e^{0.602} - 1}{e^{0.602} + 1} = 0.29 、上端は e2.170−1e2.170+1=0.80 \frac{e^{2.170} - 1}{e^{2.170} + 1} = 0.80 。母相関係数の 95% 信頼区間は 0.29 から 0.80 です。

できあがった区間を眺めると、推定値 0.6 から下端までが 0.31、上端までが 0.20 で、下側のほうが長い。上端は 1 という壁に近いので、そちら側が押し縮められています。もし r r が負なら、鏡のように下側が縮みます。

そしてこの区間は 0 を含みません。母集団で無相関(ρ=0 \rho = 0 )とは考えにくい、と言えます。ただし下端は 0.29 で、散布図 にすればうっすらと右上がりに見える程度の値です。0 を含まないという一点だけを取り出して「はっきりした相関がある」と読み替えては、区間を求めた意味がありません。両端の値がそれぞれどんな関係の強さを指すのかまで見て、初めて結論になります。

入門問題

全 3 問
問 1

相関係数の区間推定で、標本相関係数をいったん別の量に変換してから区間を作るのは、なぜですか。

問 2

標本相関係数が 0.5 のとき、フィッシャーの z 変換で得られる値はいくつですか。log⁡3=1.099 \log 3 = 1.099 とします。

問 3

標本相関係数 0.6 から作った母相関係数の 95% 信頼区間について、正しいものはどれですか。