ひよこ統計

因果関係

統計検定3級統計検定2級

火事の現場に出動した消防車の台数が多いほど、その火事の被害額は大きくなります。だからといって、消防車を減らせば被害が小さくなるとは誰も考えません。一方の値を変えたとき、それにつれてもう一方の値も変わる——この関係を因果関係といいます。台数と被害額がそろって大きいという事実だけでは、台数が被害額を押し上げたとは言えません。並んで動いていることと、一方が他方を動かしていることは別だからです。

相関 は、2つの値がそろって大きくなる、あるいは一方が大きいときもう一方は小さい、という並び方をそのまま写し取ったものです。データさえあれば 相関係数 として計算でき、どちらが原因かという判断は入りません。因果関係はそこから一歩踏み込んだ主張で、片方を動かせばもう片方が動く、と述べています。相関の値がどれだけ大きくても、この一歩は自動的には埋まりません。埋まらない理由は、次の3つの型に分かれます。

では何があれば因果関係を主張できるのでしょうか。手がかりは比べる相手です。同じ火事について消防車を多く出した場合と少なく出した場合の両方を見ることはできないので、代わりに条件をあてたグループとあてないグループを用意します(処理群と対照群)。ただし2つのグループが条件以外の点で違っていれば、上の3つの型がそのまま入り込みます。そこで、誰にどの条件をあてるかを乱数で決めたうえで、こちらから条件を変えて結果を見ます。どのグループに何人を割り当て、何を揃えて何を変えるかまで含めて比べ方を組み立てるのが 実験のデザイン(実験計画) で、その組み立てで外せない要点を無作為化・反復・局所管理の3つにまとめたのが フィッシャーの3原則 です。

裏返して「相関が無いのだから因果関係も無い」と読むのも誤りです。相関係数が測るのは直線的な関係の強さだけで、たとえば肥料の量を増やすと収穫量は途中まで増え、多すぎるとかえって減るという山型の関係では、肥料が収穫量を変えているのに相関係数は 0 に近い値になります。散布図 で形を確かめずに数値だけで切り捨てると、この型を見落とします。

新しい計算練習の方法に効果があるかを、20人の生徒で確かめます。1分間に解けた問題数を測ります。まず、やってみたい人に手を挙げてもらい、手を挙げた10人には新しい方法、残りの10人には従来の方法で練習してもらいました。表の数値はグループごとの平均です。

希望で分けた場合
方法練習前練習後
新しい方法(希望した10人)810
従来の方法(残りの10人)56

練習後だけを比べると 10 問と 6 問 で4問の差があります。しかし練習前の時点ですでに 8 問と 5 問 の差がついていました。手を挙げた生徒は、もともとよくできる層に偏っていたわけです。この4問のうちどれだけが新しい方法によるものかを、この表から取り出すことはできません。

そこで分け方を変えます。20人を乱数で10人ずつに分け、どちらのグループに新しい方法をあてるかも人の判断を入れずに決めました。無作為抽出 が母集団の中から誰を調べるかを乱数で決めるのに対し、ここで乱数が決めているのは誰にどちらの方法をあてるかです。決め方に人の判断を挟まない、という点だけが共通しています。

乱数で分けた場合
方法練習前練習後
新しい方法(10人)69
従来の方法(10人)67

今度は練習前がどちらも 6 問 で並びました。ただし、10人ずつに分けたからといって毎回こう揃うわけではありません。乱数で分けても偶然の偏りは残ります。無作為割付により、やる気や得意・不得意といった違いが特定の方法へ系統的に寄るのを防げるので、練習後の差 9−7=2 9 - 7 = 2 問は練習方法の因果効果の推定値として解釈できます。ただし20人で観測した2問差には割付による偶然変動も含まれます。個票を用いたランダム化検定や信頼区間などで不確かさを評価してから、母集団で効果があるかを判断します。

同じ20人・同じ測り方でも、分け方ひとつで読み取れることが変わりました。表に並ぶ数値をどれだけ精密に測り直しても、交絡した比較から練習方法の効果だけを取り出すことはできません。無作為割付は因果効果を識別する土台を作り、そのうえで観測差の偶然変動を評価することが、因果的な結論に必要です。

入門問題

全 4 問
問 1

2つの変数のあいだに強い相関がみられました。この結果から言えることとして、最も適切なものはどれですか。

問 2

ある調査で、通院の回数が多い人ほど健康状態が悪いという関係がみられました。この関係の読み方として、最も適切なものはどれですか。

問 3

ある小学校で全校児童を調べたところ、足のサイズが大きい児童ほど漢字テストの点数が高いという関係がみられました。この関係の説明として、最も適切なものはどれですか。

問 4

新しい教材に学力を上げる効果があるかを確かめます。効果があると主張する根拠として、最も強いものはどれですか。