ひよこ統計

母比率の区間推定

統計検定2級

世論調査の記事に「支持率 40%、誤差は ±3 ポイント」といった但し書きが添えられていることがあります(パーセントで表した数値どうしの差なので、パーセントではなくポイントと呼びます)。この ±3 ポイントが、母比率に付けられた幅です。標本 から求めた比率をそのまま母比率として言い切るのではなく、こうして幅を添えて述べるのが母比率の区間推定です。

組み立ては母平均のときと変わらず、推定値を中心に係数 × ばらつきを左右へ取ります。違うのはばらつきの中身です。1 人の回答は「支持する/しない」の2通りしかないので、標本比率の分散は p(1−p)n \frac{p(1-p)}{n} で、分子が母比率だけで決まります。ところがこの p p は今から推定したい相手なので、標本比率 p^ \hat{p} で置き換えて使います。

p^±1.96p^(1−p^)n\hat{p} \pm 1.96\sqrt{\frac{\hat{p}(1-\hat{p})}{n}}
p^ \hat{p} :標本比率(該当した人数 ÷ 標本の大きさ)、n n :標本の大きさ、1.96 1.96 :信頼係数 95% に対応する標準正規分布の上側 2.5% 点

この形は、母集団から無作為に選んだ各観測を、互いに独立な「該当する/しない」の試行として扱えることを前提にします。そのうえで、標本比率の分布を正規分布で近似できる必要があります(二項分布の正規近似)。目安は np^ n\hat{p} と n(1−p^) n(1-\hat{p}) がどちらも 5 以上、余裕をみるなら 10 以上。「30 人に聞いて 1 人が該当」のような場合は近似が成り立たず、区間の下端が負になるといった不都合も起こります。層化・クラスター抽出などの複雑な標本設計や、有限母集団から大きな割合を非復元抽出した場合は、この単純な式の標準誤差をそのまま使わず、設計効果や有限母集団修正を反映します。

根号の中の p^(1−p^) \hat{p}(1-\hat{p}) は p^=0.5 \hat{p} = 0.5 で最大になり、0 や 1 に近づくほど小さくなります。同じ人数を調べても、五分五分に割れている事柄のほうが幅は広くなります。調査を設計する段階で必要な人数を見積もるときは、この最悪の 0.5 を当てておけば足りなくなることがありません。

世論調査 の記事で見かける「誤差 ±3 ポイント」は、たいてい信頼係数 95% の区間の半幅です(この目安が回答者数 1000 人前後から来ていることは 標本誤差 で見たとおり)。信頼係数を明記しない慣習なので、読む側が 95% を補って解釈するほかありません。

母集団から 1000 人を無作為に抽出し、各人の回答を独立に扱える調査で、400 人がある政策に賛成と答えたとします。標本比率は 4001000=0.4 \frac{400}{1000} = 0.4 。np^=400 n\hat{p} = 400 ・n(1−p^)=600 n(1-\hat{p}) = 600 でどちらも十分大きいので、正規近似の式を使えます。

ばらつきは 0.4×0.61000=0.0155 \sqrt{\frac{0.4 \times 0.6}{1000}} = 0.0155 、半幅は 1.96×0.0155=0.030 1.96 \times 0.0155 = 0.030 。母比率の 95% 信頼区間は 0.370 から 0.430、パーセントに直せば 37.0% から 43.0% です。冒頭の「±3 ポイント」がまさにこれにあたります。

同じ 40% という結果でも、聞いた人数が違えば幅は変わります。

聞いた人数250 人1000 人4000 人
ばらつき0.03100.01550.0077
半幅0.0610.0300.015
95% 信頼区間0.339 〜 0.4610.370 〜 0.4300.385 〜 0.415

250 人なら ±6 ポイント、4000 人なら ±1.5 ポイント。16 倍の人数をかけて、縮んだ幅は 4 分の 1 にとどまります。誤差の幅を10分の1にするには人数が100倍必要なので、精度をもうひと桁上げる費用は急に大きくなります。

得られた区間からどこまで言えるかも見ておきます。1000 人の調査では区間の上端が 43.0% で、50% には届いていません。ここから「賛成は過半数に達していないと考えられる」とまで踏み込めます。いっぽう 250 人の調査では上端が 46.1% で、これでも過半数は否定できますが、余裕はずいぶん小さくなります。

入門問題

全 3 問
問 1

母集団から 100 人を無作為に抽出し、独立に回答を得たところ 50 人が該当しました。母比率の 95% 信頼区間はどれですか。

問 2

調べる人数と信頼係数を同じにしたとき、母比率の信頼区間の幅がもっとも広くなるのは、標本比率がどのような値のときですか。

問 3

母比率の区間推定で p^±1.96p^(1−p^)n \hat{p} \pm 1.96\sqrt{\frac{\hat{p}(1-\hat{p})}{n}} を使うために、確かめておくべきことはどれですか。