同じ「一方のほうが良かった」という結果でも、そこからどこまで主張してよいかは研究の型によって変わります。研究者が条件を割り付けて結果を比べるのが実験研究、割り付けずに起きていることを記録するのが観察研究です。ただし、実験という名称だけで因果関係が確定するわけではありません。条件以外の系統的な違いを抑える無作為割付、繰り返し、観測差の偶然変動の評価が重要です。
ここで、対象を母集団から選ぶ 無作為抽出 と、選んだ対象へ条件を決める無作為割り付けは役割が違います。無作為抽出は結果をどの母集団まで広げられるかに関わり、無作為割り付けは群の差を条件の効果として読めるかに関わります。
| 実験研究 | 観察研究 | |
|---|---|---|
| 条件の割り付け | 適切な比較実験では乱数で決める | こちらでは決めない |
| 比べる群のでき方 | こちらが作る | 対象の側の事情で決まる |
| 差が出たときの読み方 | 無作為割付と偶然変動の評価のもとで、条件の効果を推定できる | 関連があるところまで |
| 典型的な問い | 新しい肥料で収量が増えるか | 喫煙と肺の病気に関連があるか |
観察研究には、割り付けができない場面を引き受けるという固有の役割があります。喫煙が肺の病気を招くかを調べるために、人を無作為に吸う群と吸わない群へ割り付けることはできません。倫理や現実の制約で割り付けが不可能な問いでは、観察研究しか残らないのです。
観察研究で2つの群に差が見つかっても、その群を分けたのは対象者自身の選択や環境です。処理を受けた人と受けなかった人が、年齢や生活習慣でもともと違っていた可能性を消せず、その違いのほうが差を生んでいることもあります。擬相関 と同じ取り違えが、群の比較の形で起きるわけです。
そのため観察研究の結論は、設計や追加仮定なしには「関連がある」までにとどめます。因果関係 を検討するには、交絡要因の調整、別の集団での再現、時間順序や仕組みの検討などを積み重ねます。実験のデザイン(実験計画) を組める問いでも、一度割り付ければ十分なのではなく、無作為割付と繰り返しに基づいて偶然変動を評価します。
喫煙と肺の病気の関係を、400人を10年間追いかけて調べました。吸う人と吸わない人という分かれ方は、本人の選択によって生まれています。
| 見つかった | 見つからなかった | |
|---|---|---|
| 吸う人 200人 | 8 | 192 |
| 吸わない人 200人 | 2 | 198 |
発症した割合は と で、4倍の開きがあります。ところがこの2群は、処理群と対照群 として乱数で作った群ではありません。吸う人のほうが年齢が高い、屋外で働く人が多いといった違いが同時にあれば、その違いが発症の割合を押し上げていても、この表からは切り分けられません。
そこで観察研究では、疑わしい違いを名指しして削っていきます。年齢の近い人どうしに分けて比べ直しても差が残るか。1日に吸う本数が多い群ほど割合が高いか。国や年代の違う集団で調べても同じ向きの結果が出るか。こうした確認を重ねると説明は絞り込まれますが、割り付けていないという事実は最後まで消えません。喫煙と疾患の関係が長い時間をかけて認められたのは、この積み重ねが要ったからです。
観察研究で2つの群のあいだに差が見つかりました。この結果の読み方として最も適切なものはどれですか。
次の問いのうち、観察研究で調べるほかないものはどれですか。
実験研究と観察研究について、正しく述べているものはどれですか。