2つの量の 相関係数 を計算したら 0.98 という大きな値が出た——それでも、両者のあいだに直接の結びつきは何も無い、ということがあります。直接の関係が無い2つの変数のあいだに見かけの 相関 が現れる現象を擬相関といいます。
ある市の10年ぶんの記録から、コンビニの店舗数と、市民のインターネット利用率を取り出してみます。左が年ごとの推移、右が同じ10年ぶんを(店舗数, 利用率)の組にして打った 散布図 です。左のグラフは、店と%という単位の違う量を1枚に重ねるため、縦軸を左右に分けています。目盛りの取り方しだいで2本の近づき方は変わるので、線の重なり具合そのものを根拠にはできません。

どちらの量も年を追って増え続けているので、年という共通の軸を落として組にすると、点はわずかな上下をはさみつつ右上がりに並びます。店舗が増えたから利用率が上がったわけでも、その逆でもありません。相関係数は「同じ向きに伸びている」という一点だけを拾います。擬相関は、おおむね次の2つの形で生まれます。
この2つは、相関係数の値そのものからは見抜けません。計算に入るのは2つの量の数値だけで、第3の変数も、年という並び順も式には現れません。0.98 をいくら眺めても答えは出ないので、手がかりは数値の外から持ち込むしかありません。2つの量を結ぶ筋道を言葉で説明できるか、できないとしたら両方を動かしていそうなものは何か。そう問い直して疑わしい変数に見当をつけたうえで、層別した散布図 で層ごとに描き分けるか、偏相関係数 でその影響を差し引いた値を計算するか、といった手を打つことになります。
擬相関だとわかっても、相関係数の計算そのものは正しいままです。与えられた2列の数値については、値は正しく求められています。誤りが生じるのは、その値を 因果関係 の証拠として読んだ瞬間です。
8月のある売店で、7日間、その日の気温と、アイスクリーム・うちわの売上を記録しました。
| 項目 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 | 7日目 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 気温(℃) | 28 | 31 | 27 | 32 | 29 | 26 | 30 |
| アイスの売上(万円) | 4 | 7 | 3 | 8 | 5 | 2 | 6 |
| うちわの売上(万円) | 2 | 7 | 3 | 6 | 5 | 1 | 4 |
アイスの平均は 5 万円、うちわの平均は 4 万円です。日ごとの偏差はアイスが −1, 2, −2, 3, 0, −3, 1、うちわが −2, 3, −1, 2, 1, −3, 0 なので、偏差の積の和は 、偏差の2乗和はアイスもうちわも 28 になります。相関係数は 共分散 を2つの 標準偏差 の積で割った値ですが、どちらも で割る操作が打ち消し合うので、 と、偏差の積の和と偏差の2乗和だけから求まります。
とはいえ、うちわを買った人がアイスも買った、という話ではありません。表の1行目に目を移すと、気温の高い日ほどどちらもよく売れています。気温の低い順に日を並べ替えると、アイスは 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8 と一段ずつ増え、うちわも 1, 3, 2, 5, 4, 7, 6 と多少の上下をはさみながら増えていきます。暑さという共通の原因が、2つの売上を同じ向きに押し上げていたわけです。
この7日間には26℃の日も32℃の日も混ざっていました。気温がほぼ同じ日ばかりを集めて計算していれば、0.89 という値は出てこなかったはずです。値を押し上げていたのは、記録した期間に涼しい日と暑い日の両方が含まれていたという、データの取り方のほうでした。
擬相関の説明として最も適切なものはどれですか。
ある国の1985年から2020年までの記録では、年ごとの平均寿命と、家庭にあるパソコンの台数の相関係数が 0.96 になりました。どちらの量も年を追って増え続けています。この値が大きくなった理由として最も適切なものはどれですか。
ある小学校で、1年生から6年生までの児童を集めて身長と漢字の書き取りテストの得点を調べたところ、相関係数は 0.85 でした。学年が上がるほど、どちらも大きくなります。この結びつきが学年によるものかどうかを確かめる方法として適切なものはどれですか。