10回に1回の割合でカウントされる歩数計で1,000歩あるいたとき、110回以上カウントされる確率を知りたいとします。カウント数は に従うので、二項分布 の式で から までを足せば答えは出ます。ただし891項ぶん、しかも を含む計算です。とても手では終わりません。
そこで形を見ます。二項分布は が大きくなるほど左右対称のなめらかな山に近づき、平均 ・分散 の 正規分布 とほとんど重なります。これを利用して確率を求めるのが二項分布の正規近似です。

では棒が数本しかなく、階段状の輪郭が曲線からはみ出しています。ところが になると棒の先端が曲線をなぞります。近似の精度は だけでなく にも左右されます。 が 0 や 1 に近いと山が端に押しつけられて左右対称になれないためで、目安として と がどちらも5以上あることを確かめます。
使うときは、二項分布を正規分布に置き換えたうえで標準化します。
分母に置くのは分散 そのものではなく、その平方根です。ここで平方根を忘れる誤り、そして分散を と書いてしまう誤りの2つが定番で、どちらも標準化の分母をずらします。
冒頭の歩数計を計算します。カウント数 なので、期待値は 、分散は 。・ でどちらも5を大きく超えており、近似して差し支えありません。
を で置き換えて標準化すると 。標準正規分布表(読み方は 標準正規分布表の利用)から なので、およそ15%です。891項の足し算が、標準化1回と表引き1回で済みました。
ここで を90のままにすると となり、確率は46%と大きく外れます。分散と標準偏差の取り違えは、答えが3倍違うほどの影響を持ちます。
ただし置き換えたぶんのずれは残ります。この例の厳密な値は 0.1583 で、いま求めた 0.1469 とは1ポイントほど違います。とびとびの棒をなめらかな曲線で代用したことによる系統的なずれで、これを詰める手当てが 連続修正 です(別項で扱います)。近似は速さと引き換えに精度を少し手放している、と押さえておきます。
同じ考え方は割合にも使えます。出口調査で100人中54人がA候補に投票したとしましょう。回数を で割れば割合になるので、標本比率 の散らばりは で決まります。本来ここに入るのは真の得票率 ですが、それが分からないから調べているので、手元の で代用して と見積もります。
標本比率が真の得票率から 0.1 以内に収まる確率は、 より 、およそ96%です。動くのは標本比率のほうで、真の得票率は動かない1つの値だという点を取り違えないようにします。
を正規分布で近似して を求めます。標準化した の値はどれですか。
発芽率0.5の種を400粒まくとき、発芽数が220粒以上となる確率を正規近似で求める式はどれですか。
・標本比率 のとき、 の値はどれですか。
二項分布を正規分布で近似してよいかどうかの目安として、最も適切なものはどれですか。