ひよこ統計

標本平均の期待値・分散

統計検定2級

標本 を取り直すたびに値の変わる標本平均 Xˉ \bar{X} は、それ自体がひとつの確率変数です。ならば期待値と分散を持つはずで、しかもその2つは母集団の値だけを使ってきれいに書けます。

母平均 μ \mu ・母分散 σ2 \sigma^2 の母集団から大きさ n n の無作為標本 X1,…,Xn X_1, \ldots, X_n をとり、その平均を Xˉ=1n∑i=1nXi \bar{X} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} X_i とします。このとき次が成り立ちます。

E(Xˉ)=μ,V(Xˉ)=σ2nE(\bar{X}) = \mu, \qquad V(\bar{X}) = \frac{\sigma^2}{n}
μ \mu :母平均、σ2 \sigma^2 :母分散、n n :標本の大きさ

期待値のほうは素直です。和の期待値 は独立でなくても和になるので E(X1+⋯+Xn)=nμ E(X_1 + \cdots + X_n) = n\mu 、これを n n で割れば μ \mu に戻ります。標本平均は平均的には母平均を当てにいく、ということです。

分散のほうには n n が残ります。無作為抽出で各 Xi X_i が独立なら和の分散は nσ2 n\sigma^2 ですが、1n \frac{1}{n} 倍する操作は分散を 1n2 \frac{1}{n^2} 倍にするので、掛け合わせて σ2n \frac{\sigma^2}{n} になります。標本を大きくするほど標本平均は動かなくなる、という事実がここに出ています。

小さくなるのは標本平均のばらつきであって、母分散 σ2 \sigma^2 ではありません。σ2 \sigma^2 は母集団が持っている性質なので、何人調べようと変わりません。「たくさん調べたのでデータの散らばりが小さくなった」という言い方をしてしまったら、この2つを取り違えています。

実際に使うのは平方根をとった σn \frac{\sigma}{\sqrt{n}} のほうで、これを 標準誤差 と呼びます。分母が n \sqrt{n} であることの意味は小さくありません。ぶれを半分にしたければ標本を2倍ではなく 4倍 にする必要があります。誤差を少し縮めるだけでも、標本数はそれ以上の割合で増えます。

母集団が 2, 4, 6, 8 の4つの数だけからなるとします。母平均は μ=5 \mu = 5 、母分散は偏差 −3,−1,1,3 -3, -1, 1, 3 から 9+1+1+94=5 \frac{9 + 1 + 1 + 9}{4} = 5 です。

ここから1つ取り出しては戻す、を2回繰り返します。取り方は 4×4=16 4 \times 4 = 16 通りあり、それぞれ同じ確からしさで起こります。標本平均 Xˉ \bar{X} がとる値と、その確率を並べてみます。

標本平均2.03.04.05.06.07.08.0
確率1/162/163/164/163/162/161/16

たとえば Xˉ=3.0 \bar{X} = 3.0 になるのは (2, 4) と (4, 2) の2通り、Xˉ=5.0 \bar{X} = 5.0 になるのは (2, 8) (4, 6) (6, 4) (8, 2) の4通り。中央の 5.0 がいちばん起こりやすく、両端の 2.0 と 8.0 は最も起こりにくい形になっています。

この分布の期待値を計算すると 5.0 で、母平均と一致します。分散は各値の偏差を2乗して確率で重みづけし、9×1+4×2+1×3+0×4+1×3+4×2+9×116=4016=2.5 \frac{9 \times 1 + 4 \times 2 + 1 \times 3 + 0 \times 4 + 1 \times 3 + 4 \times 2 + 9 \times 1}{16} = \frac{40}{16} = 2.5 。公式の σ2n=52=2.5 \frac{\sigma^2}{n} = \frac{5}{2} = 2.5 と合いました。

母集団のほうは 2 から 8 まで平らに散らばっていたのに、2つの平均をとっただけで中央に山ができ、分散は 5 から 2.5 へ半分になりました。標本を大きくしていけば、この山はさらに細くなっていきます。

入門問題

全 4 問
問 1

母分散が 36 の母集団から大きさ 9 の無作為標本をとるとき、標本平均の分散はいくつですか。

問 2

標本平均の標準偏差を、いまの3分の1にしたいとします。標本の大きさを何倍にすればよいですか。

問 3

母平均 60 の母集団から、大きさ 4 の標本と大きさ 100 の標本をとります。それぞれの標本平均の期待値はいくつですか。

問 4

母集団が 1, 3, 5 の3つの数からなります。1つ取り出しては戻す方法で大きさ 2 の標本をとるとき、標本平均の分散はいくつですか。