標本 を取り直すたびに値の変わる標本平均 は、それ自体がひとつの確率変数です。ならば期待値と分散を持つはずで、しかもその2つは母集団の値だけを使ってきれいに書けます。
母平均 ・母分散 の母集団から大きさ の無作為標本 をとり、その平均を とします。このとき次が成り立ちます。
期待値のほうは素直です。和の期待値 は独立でなくても和になるので 、これを で割れば に戻ります。標本平均は平均的には母平均を当てにいく、ということです。
分散のほうには が残ります。無作為抽出で各 が独立なら和の分散は ですが、 倍する操作は分散を 倍にするので、掛け合わせて になります。標本を大きくするほど標本平均は動かなくなる、という事実がここに出ています。
小さくなるのは標本平均のばらつきであって、母分散 ではありません。 は母集団が持っている性質なので、何人調べようと変わりません。「たくさん調べたのでデータの散らばりが小さくなった」という言い方をしてしまったら、この2つを取り違えています。
実際に使うのは平方根をとった のほうで、これを 標準誤差 と呼びます。分母が であることの意味は小さくありません。ぶれを半分にしたければ標本を2倍ではなく 4倍 にする必要があります。誤差を少し縮めるだけでも、標本数はそれ以上の割合で増えます。
母集団が 2, 4, 6, 8 の4つの数だけからなるとします。母平均は 、母分散は偏差 から です。
ここから1つ取り出しては戻す、を2回繰り返します。取り方は 通りあり、それぞれ同じ確からしさで起こります。標本平均 がとる値と、その確率を並べてみます。
| 標本平均 | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | 7.0 | 8.0 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 確率 | 1/16 | 2/16 | 3/16 | 4/16 | 3/16 | 2/16 | 1/16 |
たとえば になるのは (2, 4) と (4, 2) の2通り、 になるのは (2, 8) (4, 6) (6, 4) (8, 2) の4通り。中央の 5.0 がいちばん起こりやすく、両端の 2.0 と 8.0 は最も起こりにくい形になっています。
この分布の期待値を計算すると 5.0 で、母平均と一致します。分散は各値の偏差を2乗して確率で重みづけし、。公式の と合いました。
母集団のほうは 2 から 8 まで平らに散らばっていたのに、2つの平均をとっただけで中央に山ができ、分散は 5 から 2.5 へ半分になりました。標本を大きくしていけば、この山はさらに細くなっていきます。
母分散が 36 の母集団から大きさ 9 の無作為標本をとるとき、標本平均の分散はいくつですか。
標本平均の標準偏差を、いまの3分の1にしたいとします。標本の大きさを何倍にすればよいですか。
母平均 60 の母集団から、大きさ 4 の標本と大きさ 100 の標本をとります。それぞれの標本平均の期待値はいくつですか。
母集団が 1, 3, 5 の3つの数からなります。1つ取り出しては戻す方法で大きさ 2 の標本をとるとき、標本平均の分散はいくつですか。