社会のできごとや政策について人々がどう考えているかを、標本調査 によって調べるものを世論調査といいます。報道機関のほか、内閣府などの行政機関や地方公共団体も行っています。ニュースで流れる支持率や賛成率は、たいてい数千人に聞いた結果です。
ここまでは 母集団 と 標本 の話の当てはめですが、世論調査には固有の難しさがあります。測ろうとしているのが、身長や収入のようにあらかじめ決まった量ではなく、人の考えだという点です。考えは、聞かれ方しだいで形を変えます。
同じことを尋ねているつもりでも、質問文の言葉を変えると答えの分布は動きます。「賛成ですか、反対ですか」と正面から聞く場合と、「〜という意見がありますが、どう思いますか」と前置きを添える場合とでは、後者のほうが前置きに引きずられた答えが増えます。「どちらともいえない」という選択肢を用意するかどうかでも、賛成・反対の比は変わります。
聞いた時期によっても、賛成・反対の割合は上下します。世論はできごとに反応して動くので、大きな報道の前後では結果が変わります。したがって、時期の違う2つの調査を並べて「世論が動いた」と読むには、そのあいだに何があったかを合わせて見る必要があります。
記事の末尾か注記には、調査した期間・対象・方法・回答数が書かれています。数字を受け取る前にそこを読む習慣をつけると、その調査どうしを比べてよいのかが判断できます。
ある制度の導入について、同じ週に選んだ2000人を無作為に1000人ずつの二群へ割り付け、異なる質問文で尋ねました。
| 賛成 | 反対 | どちらともいえない | |
|---|---|---|---|
| 「この制度の導入に賛成ですか、反対ですか」 | 52% | 28% | 20% |
| 「費用がかかるという指摘もありますが、導入に賛成ですか、反対ですか」 | 41% | 39% | 20% |
| 「賛成ですか、反対ですか」(中間の選択肢なし) | 63% | 37% | — |
1行目と2行目は、無作為割付によって標本構成の差を偶然の範囲に抑え、前置きの有無だけを変えています。賛成率の差は 11ポイント で、この例では差の標準誤差が約2.2ポイント、95%信頼区間はおよそ7〜15ポイントです。0を含まないため、標本誤差だけでは説明しにくく、質問文の効果が示されています。
3行目は選択肢の作りの違いです。中間の選択肢を外すと、決めかねていた20%がどちらかへ振り分けられ、賛成は63%に跳ね上がります。1行目の52%と3行目の63%が並んでいれば、まるで世論が動いたように見えるでしょう。
世論調査を比べるときに最初にそろえるのは、人数でも実施した機関でもなく、この質問文と選択肢です。
報道機関が全国の有権者を対象に行う世論調査は、ふつうどのような調査ですか。
ある制度について、同じ週に選んだ2000人を無作為に1000人ずつへ割り付け、一方だけ質問文に前置きを添えました。賛成率は52%と41%で、差の95%信頼区間はおよそ7〜15ポイントでした。この差の説明として最も適切なものはどれですか。
賛成・反対を尋ねる調査で、「どちらともいえない」という選択肢を用意しなかった場合に起こることとして、最も適切なものはどれですか。