2万世帯が暮らす市で、400世帯にだけ聞いて市全体のことを語る。割合にすればわずか 2% です。残りの 98% を調べないまま結論を出してよいものか、と身構えるのが自然な感覚でしょう。
標本調査は、母集団 から一部を取り出して調べ、その結果から母集団の様子を推し量る調査です。取り出した一部が 標本 にあたります。対象をひとつ残らず調べる 全数調査 と違い、費用も時間も比べものにならないほど軽く済みます。
一部で足りる理由は、選び方にあります。無作為抽出 で選べば、標本は母集団の縮図になることが期待でき、しかもずれの大きさまで確率で見積もれます。ずれの大きさを計算できる、という点が決定的です。当てずっぽうではなく、誤差の幅を添えて結論を出せるからこそ、一部から全体を語ることが許されます。
抽出率が十分小さいとき、精度は「母集団の何%を調べたか」よりも 標本の大きさ に強く左右されます。全国1億人から選んだ1500人と、人口2万人の市から選んだ1500人では、割合は 0.0015% と 7.5% でまるで違いますが、標本のばらつきはほぼ同じになります。ただし、非復元抽出で抽出率を無視できない場合には、有限母集団修正によって標準誤差が小さくなります。この例では、市の標準誤差が国より約4%小さくなります(有限母集団 で式のかたちを扱います)。
実施の手順は、母集団を定義し、名簿を用意し、そこから標本を抽出し、測定して、母集団の値を推定する、という流れになります。この設計をどう組むかは 調査の設計 で扱います。
一部しか見ていない以上、結果には必ずずれが伴います。偶然に由来するずれが 標本誤差、選び方や答えの得られ方に由来するずれが 偏りの源 から生じるもので、両者は性質が違います。標本調査の結果を読むときは、この2種類を分けて考えます。
冒頭の市で、実際に400世帯を無作為抽出して1週間のごみの排出量を測ったとします。標本平均は 8.0 kg、標準偏差 は 4.0 kg でした。
この 8.0 kg にどれだけの幅を見込むべきかは、標本平均の期待値・分散 から見当がつきます。標本平均の散らばりの目安は kg。その約1.96倍を見込めば、母平均はおよそ kg の範囲に収まると考えられます。2万世帯すべてを測らなくても、この幅までは言えるわけです。
ここで冒頭の 2% という数字を思い出します。この計算のどこにも、母集団の 20000 は現れていません。使ったのは標準偏差 4.0 と標本の大きさ 400 だけです。したがって同じ400世帯を全国2000万世帯から選んだとしても、幅は同じ kg のままです。
得られた幅を市全体の量に戻してみます。1世帯あたり 8.0 kg なら、2万世帯で t。幅のほうは t です。1世帯あたりでは 0.4 kg という小さな幅も、全体に引き伸ばせば 8 t の開きになります。政策の判断にこの数字を使うなら、160 t という中心の値だけでなく、152 t から 168 t という幅のほうを見ることになります。
人口2万人の市と、人口1億人の国で、それぞれ無作為に1500人を選んで同じ質問をしました。有限母集団修正を無視した概算で、得られる結果の精度について正しいものはどれですか。
2万世帯の市で標本調査を行い、1世帯あたりのごみの排出量は 1週間で 8.0 kg、その幅はおよそ kg と分かりました。市全体の1週間の総排出量は、どう見積もられますか。