ひよこ統計

母分散の検定

統計検定2級

重さの平均が表示どおりでも、個体ごとの散らばりが以前より大きくなれば、規格から外れる製品は増えます。そこで平均ではなく散らばりを問うのが母分散の検定で、母分散が指定した値 σ02 \sigma_0^2 に等しいといえるかを標本から判断します。帰無仮説は H0:σ2=σ02 H_0: \sigma^2 = \sigma_0^2 、対立仮説は σ2≠σ02 \sigma^2 \neq \sigma_0^2 (両側)か、増減の向きを定めた片側です。

手元にあるのは、標本から計算した不偏分散 s2 s^2 です。ただし s2 s^2 と σ02 \sigma_0^2 を直接見比べても、どれだけ離れていれば違うと言ってよいのかは決まりません。そこで母集団が正規分布に従うことを前提に、両者の比の形へ直します。帰無仮説が正しいとき、この量は自由度 n−1 n-1 の カイ二乗分布 に従うからです。

χ2=(n−1)s2σ02 ∼ χ2(n−1)\chi^2 = \frac{(n-1)s^2}{\sigma_0^2} \ \sim \ \chi^2(n-1)
s2 s^2 :標本から計算した不偏分散(偏差の2乗和を n−1 n-1 で割った量)、σ02 \sigma_0^2 :帰無仮説が指定する母分散の値、n n :標本の大きさ、χ2(n−1) \chi^2(n-1) :自由度 n−1 n-1 のカイ二乗分布
自由度7のカイ二乗分布の密度曲線。右へ長い裾を引く非対称な形で、山の頂点は 5 のあたりにある。1.69 より左の細い裾と 16.01 より右の裾がそれぞれ塗られ、平均 7 の位置に破線が引かれている。破線から左の境界までの距離より、右の境界までの距離のほうが長い
自由度 7 のカイ二乗分布と、有意水準5%の両側検定の棄却域(左右とも面積は 2.5%)

山の頂点は 5(自由度から 2 を引いた値)で、平均 7 の位置(破線)とは一致しません。右へ長い裾を引くぶん、平均が頂点より右へずれるからです。この非対称さは境界にも表れ、破線から下側の 1.69 までは 5.31、上側の 16.01 までは 9.01 と等距離になりません。そのため棄却域は、上側確率点 の表から上側確率 α2 \frac{\alpha}{2} と 1−α2 1-\frac{\alpha}{2} の点を別々に読み取り、χ2>χα/22(n−1) \chi^2 > \chi^2_{\alpha/2}(n-1) または χ2<χ1−α/22(n−1) \chi^2 < \chi^2_{1-\alpha/2}(n-1) とします。

片側検定なら、p値 は観測した χ2 \chi^2 より外側の裾確率です。このページで使う、上下に α/2 \alpha/2 ずつ置く等裾の両側検定では、下側確率と上側確率の小さいほうを2倍し、1を上限とした値を両側p値と定めます。カイ二乗分布は非対称なので、観測値から左右へ同じ距離の点を取る方法ではありません。

もうひとつ、この検定は正規母集団という前提に強く依存します。母平均の検定 なら、標本を大きくするほど 中心極限定理 により標本平均の分布が正規分布に近づくので、母集団の形が多少ずれていても結論は大きくは狂いません。母分散の検定にその支えはなく、裾の重い母集団に当てはめれば、有意水準 5% のつもりが、実際にはそれを大きく超える割合で棄却してしまいます。

ある装置が作る部品の重さは正規分布に従い、これまでは母分散 4 g²(母標準偏差 2 g)で安定していました。装置を更新したので、ばらつきが変わったかどうかを確かめます。更新後の 8 個を測ると 6, 7, 7, 9, 11, 13, 13, 14 g でした。

帰無仮説は H0:σ2=4 H_0: \sigma^2 = 4 、対立仮説は変化の向きを決めていないので H1:σ2≠4 H_1: \sigma^2 \neq 4 の両側です。標本平均は 80÷8=10 80 \div 8 = 10 g、偏差 −4, −3, −3, −1, 1, 3, 3, 4 -4,\ -3,\ -3,\ -1,\ 1,\ 3,\ 3,\ 4 の2乗和は 16+9+9+1+1+9+9+16=70 16+9+9+1+1+9+9+16 = 70 、不偏分散は s2=70÷7=10 s^2 = 70 \div 7 = 10 g² になります。

χ2=(8−1)×104=704=17.5\chi^2 = \frac{(8-1) \times 10}{4} = \frac{70}{4} = 17.5

自由度は 8−1=7 8 - 1 = 7 。カイ二乗分布表から χ0.0252(7)=16.01 \chi^2_{0.025}(7) = 16.01 ・χ0.9752(7)=1.69 \chi^2_{0.975}(7) = 1.69 なので、有意水準5%の棄却域は 1.69 より小さい側と 16.01 より大きい側の2か所です。17.5 > 16.01 で上側に入りましたから帰無仮説を棄却し、ばらつきは 4 g² のままとは言えないと判断します。

水準を 1% に下げると、上側の境界は χ0.0052(7)=20.28 \chi^2_{0.005}(7) = 20.28 まで遠のくので棄却できません。同じことは確率でも確かめられます。17.5 より上側の確率は約 0.014 で、等裾の両側p値は小さいほうの裾確率を2倍した約 0.028 です。したがって 5% では棄却し、1% では棄却しないという境界での判定と一致します。

入門問題

全 5 問
問 1

正規母集団について H0:σ2=σ02 H_0: \sigma^2 = \sigma_0^2 を検定するとき、用いる検定統計量とその帰無分布の組み合わせはどれですか。

問 2

正規母集団から大きさ 10 の標本をとったところ、不偏分散は 6 でした。H0:σ2=3 H_0: \sigma^2 = 3 を検定するときの検定統計量の値はいくつですか。

問 3

正規母集団から大きさ 8 の標本をとり、有意水準5%で母分散の両側検定を行います。自由度 7 のカイ二乗分布の上側 2.5% 点が 16.01、上側 97.5% 点が 1.69 のとき、棄却域はどれですか。

問 4

母分散の両側検定におけるp値について、正しい説明はどれですか。

問 5

母分散の検定を行ううえで欠かせない前提はどれですか。