ひよこ統計

標準誤差

統計検定2級

同じ母集団から標本を取り直せば、そのつど標本平均は違う値になります。だとすると、手元に出た1つの数値がどれだけ当てになるかは、その数値だけを眺めていても分かりません。推定量 が標本ごとにどれだけ振れるか、その振れ幅こそが精度の目安で、これを標準誤差といいます。中身は推定量そのものの 標準偏差 です。

SE(Xˉ)=σn\mathrm{SE}(\bar{X}) = \frac{\sigma}{\sqrt{n}}
SE(Xˉ) \mathrm{SE}(\bar{X}) :標本平均の標準誤差、σ \sigma :母標準偏差、n n :標本の大きさ

この形は 標本平均の期待値・分散 から出ます。標本平均の分散が σ2n \frac{\sigma^2}{n} なので、その平方根が標本平均の標準誤差です。母標準偏差 σ \sigma が分からなければ、標本から計算した標準偏差 s s で置きかえます。名前の似た標準偏差とは、そもそも何のばらつきを測っているのかが違います。

標準偏差標準誤差
何の散らばりかデータ1つ1つが平均から離れている幅推定量の値が標本ごとに動く幅
標本を大きくすると母標準偏差 σ \sigma に近づく(小さくならない)n \sqrt{n} に反比例して小さくなる
標本平均について記号で書くとs s sn \frac{s}{\sqrt{n}}

分かれ目は2行目です。人数を増やしても、1人1人の値の散らばり方そのものは変わりません。縮むのは、そこから計算した平均という1つの値の振れ方のほうです。

標本平均だけの話ではありません。式は推定量ごとに違い、標本比率なら p(1−p)n \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} 、回帰直線の傾きならまた別の形になります。共通するのは、推定量が標本ごとに動く幅を表すという役割です。信頼区間 の幅も、検定統計量の分母も、ここから作られます。

最小二乗法 で当てはめた直線の傾き b^ \hat{b} を例にとります。これも標本ごとに値の変わる推定量ですから、標準誤差 SE(b^) \mathrm{SE}(\hat{b}) を持ちます。傾きが 0 といえるかを調べる t=b^SE(b^) t = \frac{\hat{b}}{\mathrm{SE}(\hat{b})} も、傾きの区間推定も、この値を分母や幅に使って組み立てます(回帰直線の傾きの推定と検定)。

報告書やグラフで「平均 5.0 ± 0.7」と書かれていても、後ろの 0.7 が何を測った値かは、数値そのものからは決まりません。まず凡例や注記にあたって、書き手がどちらを添えたのかを確かめます。標本を大きくするほど標準誤差は小さくなりますから、そこを確かめずに幅の狭さだけで「ばらつきの小さいデータだ」と読むと、実際には調べた人数が多かっただけ、ということが起こります。

ある図書館の利用者全体から9人を無作為に選び、先月借りた本の冊数をたずねました。

AさんBさんCさんDさんEさんFさんGさんHさんIさん
冊数(冊)233456778
偏差−3−2−2−101223

平均は 45÷9=5 45 \div 9 = 5 冊です。偏差の2乗の合計は 9+4+4+1+0+1+4+4+9=36 9+4+4+1+0+1+4+4+9 = 36 なので分散は 36÷9=4 36 \div 9 = 4 、標準偏差は 4=2 \sqrt{4} = 2 冊となります。9人の冊数は平均から2冊ほど離れている、という読み方になります。

同じデータから標準誤差も求まります。母標準偏差は分かりませんから s=2 s = 2 を代わりに使って 29=23≈0.67 \frac{2}{\sqrt{9}} = \frac{2}{3} \approx 0.67 冊。こちらが答えているのは「別の9人を選び直したら、平均 5 冊はどれくらい動くか」という問いです。1人1人は2冊前後ばらついているのに、その平均は0.7冊ほどしか動きません。平均をとる過程で、多く借りた人と少なく借りた人が打ち消し合うからです。

ここで使った s s は、偏差の2乗の合計を n n で割って求めた標準偏差です。母標準偏差を推定するつもりで、点推定 で扱った不偏分散にならって n−1 n-1 で割ると 36÷8≈2.12 \sqrt{36 \div 8} \approx 2.12 となり、標準誤差は 0.71 冊になります。どちらの割り方も使われており、n n が大きくなるほど両者の差は縮みます。

人数を36人に増やして測り直したとします。借りる冊数のばらつき方は利用者全体が持っている性質ですから、標準偏差はやはり 2 冊前後のままです。動くのは標準誤差のほうで、236=13≈0.33 \frac{2}{\sqrt{36}} = \frac{1}{3} \approx 0.33 冊まで縮みます。人数を4倍にすると振れ幅は半分になります。標本を大きくしたときに動くのは標準誤差だけで、標準偏差のほうはその影響を受けません。

入門問題

全 4 問
問 1

無作為に選んだ9人が先月借りた本の冊数から、平均 5 冊、標準偏差 2 冊、標準誤差 0.67 冊が得られました。このうち 0.67 冊が表しているものはどれですか。

問 2

母標準偏差が 6 と分かっている母集団から、大きさ 36 の標本を無作為に取ります。標本平均の標準誤差はいくらですか。

問 3

同じ母集団から取る標本の大きさを 100 から 400 に増やしました。標本平均の標準誤差と、データそのものの標準偏差は、それぞれどうなると考えられますか。

問 4

回帰直線の傾きの推定値には、その標準誤差が添えられることがあります。この標準誤差が表しているものはどれですか。