ひよこ統計

変動の分解

統計検定2級

同じデータに違う直線を当てはめても、観測された y y の散らばり具合そのものは変わりません。変わるのは、その散らばりのうちどれだけを直線で説明できたか、という内訳のほうです。散らばりを平均からのずれの2乗和、すなわち変動として測り、x x の違いで説明できる部分と、直線ではとらえきれずに残る部分の2つに切り分けることを変動の分解といいます。以下では、この2乗和を平方和と呼びます。

まず1件ごとの 観測値と予測値 に目を向けます。i i 番目のデータでは、平均 yˉ \bar{y} からのずれを yi−yˉ=(y^i−yˉ)+(yi−y^i) y_i - \bar{y} = (\hat{y}_i - \bar{y}) + (y_i - \hat{y}_i) と書き直せます。第1項は予測値 y^i \hat{y}_i が平均からどれだけ離れたか、つまり直線が説明した分で、第2項は 最小二乗法 で扱った残差です。y^i \hat{y}_i を足して引いただけの式ですが、これでずれの内訳が見えます。下の図は、4g の鉢についてこの3つの長さを縦線で描き分けたものです。そしてこの関係は、2乗してすべての点にわたって合計しても崩れません。

5つの鉢の与えた肥料の量と伸びた高さの散布図。点は (1,2)、(2,1)、(3,5)、(4,9)、(5,8) の5つで、回帰直線 y = 2x − 1 と、高さの平均 5cm を示す水平の破線が引かれている。4g の点だけについて3本の太い縦線が描かれ、左側の1本は平均の 5cm から観測値 9cm までの全体のずれ、右側は平均の 5cm から直線上の 7cm までと、そこから観測値 9cm までの2本が上下に積み重なっている。4g の直線上には予測値 7cm を示す白抜きの丸が置かれ、左上には回帰直線・伸びた高さの平均・全体のずれ・直線で説明できる分・残差の5項目からなる凡例がある。
4g の鉢では、全体のずれ 4cm が、直線で説明できる分 2cm と残差 2cm に分かれる
ST=SA+SeS_T = S_A + S_e
ST S_T :全平方和(全変動)∑i=1n(yi−yˉ)2 \sum_{i=1}^{n}\left(y_i - \bar{y}\right)^2 。観測値全体のばらつき、SA S_A :回帰平方和 ∑i=1n(y^i−yˉ)2 \sum_{i=1}^{n}\left(\hat{y}_i - \bar{y}\right)^2 。直線が説明する分、Se S_e :残差平方和 ∑i=1n(yi−y^i)2 \sum_{i=1}^{n}\left(y_i - \hat{y}_i\right)^2 。説明しきれずに残る分

点ごとの分け方を2乗して合計すると、本来なら2つの部分を掛け合わせた項(交差項)が残るはずです。ところが最小二乗法で引いた直線では、残差の合計も、残差に予測値を掛けた合計も 0 になるため、交差項の合計はちょうど消えます。だからこそ、ずれの分解がそのまま平方和の分解として成り立ちます。

変動は 分散 とは違う量です。ST S_T は平均からのずれを2乗して足しただけで、個数では割っていません。また ST S_T は観測値 y y とその平均だけから決まるので、どんな直線を当てはめても値は動きません。最小二乗法で切片を含む回帰直線を引いた場合は交差項が 0 になるため、ST=SA+Se S_T = S_A + S_e と必ず分解できます。

分けたあとは、直線の当てはまりを数値で語れるようになります。SA S_A が ST S_T のどれだけを占めるかを比で表したものが 決定係数、ST S_T を SA S_A と Se S_e に分け、自由度とともに並べた表が 分散分析表 です。

5つの鉢のデータで求める3種類の平方和

図に描いた5つの鉢について、与えた肥料 x x と伸びた高さ y y を並べます。最小二乗法で求めた直線は y^=2x−1 \hat{y} = 2x - 1 、高さの平均は yˉ=5 \bar{y} = 5 cm です。

与えた肥料1g2g3g4g5g
伸びた高さ y y (cm)21598
予測値 y^ \hat{y} (cm)13579
全体のずれ y−yˉ y - \bar{y} −3−4043
説明できる分 y^−yˉ \hat{y} - \bar{y} −4−2024
残差 y−y^ y - \hat{y} 1−202−1

下の3行はどの列でも、上の値が下2つの和になっています。たとえば 5g の鉢では 3=4+(−1) 3 = 4 + (-1) です。そこで3行それぞれを2乗して合計します。全平方和は 9+16+0+16+9=50 9+16+0+16+9 = 50 、回帰平方和は 16+4+0+4+16=40 16+4+0+4+16 = 40 、残差平方和は 1+4+0+4+1=10 1+4+0+4+1 = 10 となり、たしかに 50=40+10 50 = 40 + 10 が成り立ちました。

交差項が消えることも確かめます。説明できる分と残差を列ごとに掛けると −4, 4, 0, 4, −4 -4,\ 4,\ 0,\ 4,\ -4 が並び、合計は 0 です。2乗和どうしを足すだけで済んだのは、この項が消えてくれたおかげです。

では、最小二乗法を使わずに引いた直線ではどうなるでしょうか。同じ平均の組を通る y^=2+x \hat{y} = 2 + x で計算すると、予測値は 3, 4, 5, 6, 7 3,\ 4,\ 5,\ 6,\ 7 なので回帰平方和は 4+1+0+1+4=10 4+1+0+1+4 = 10 、残差は −1, −3, 0, 3, 1 -1,\ -3,\ 0,\ 3,\ 1 で残差平方和は 1+9+0+9+1=20 1+9+0+9+1 = 20 です。合計は 30 で、全平方和の 50 に届きません。先ほどと同じように説明できる分と残差を列ごとに掛けると 2, 3, 0, 3, 2 2,\ 3,\ 0,\ 3,\ 2 が並び、合計は 10 になって 0 から外れます。2乗して展開すると、この積の合計は2倍されて交差項として残るので、足りない分は 2×10=20 2 \times 10 = 20 です。全平方和 50 は直線を変えても同じままで、分け方だけが崩れています。

入門問題

全 4 問
問 1

単回帰で観測値 y y のばらつきを平方和に分けたとき、成り立つ関係はどれですか。

問 2

ある単回帰で、全平方和が 50、回帰平方和が 40 でした。残差平方和はいくつですか。

問 3

同じデータに、最小二乗法とは別の引き方で直線を当てはめました。このとき値が変わらないものはどれですか。

問 4

単回帰で、y^i−yˉ \hat{y}_i - \bar{y} が表しているものはどれですか。