ひよこ統計

ブロック化

統計検定2級

日によって風の強さが変わる屋外で、紙飛行機の折り方を比べるとします。飛んだ距離の差が折り方によるものか、その日の風によるものかを分けたい。このように結果を動かす違いが前もって分かっているとき、その違いが揃う範囲ごとに実験の場を塊(ブロック)へ区切り、比較を塊の内側だけで行うことをブロック化といいます。塊の間の差は、この後で見るとおり計算の側でも取り除きます。このブロック化を実験の手順にまで落とし込んだ計画が乱塊法(乱塊計画)です。無作為化をやめるわけではありません。各ブロックに全ての水準を1回ずつ置き、ブロックの中での割り付けだけを乱数で決める——つまり無作為化の範囲をブロックの内側に限ります。フィッシャーの3原則 の局所管理と無作為化を、1つの割り付けで同時に満たす組み方です。

比べたい条件の水準数を a a 、ブロックの数を b b とすると、各組合せに1つずつ割り付けて ab ab 個の実験単位を使います。1つずつというのはブロックごとに1つずつという意味で、1つの水準は全ブロックを通じて b b 回試されます。反復 が無いわけではないので、残差の自由度 (a−1)(b−1) (a-1)(b-1) は 0 にならず、残差平均平方も求められます。分析でもブロックは単なる区切りではなく1つの要因として数え、一元配置実験 では2つだった平方和の分け先が3つになります。

乱塊法での平方和と自由度の分け方
要因平方和自由度
水準間SA S_A a−1 a-1
ブロック間SB S_B b−1 b-1
残差Se S_e (a−1)(b−1) (a-1)(b-1)
全体ST S_T ab−1 ab-1
ST=SA+SB+Se,自由度=(a−1)+(b−1)+(a−1)(b−1)=ab−1S_T = S_A + S_B + S_e, \qquad \text{自由度} = (a-1) + (b-1) + (a-1)(b-1) = ab - 1
ST S_T :全平方和(全データの総平均からのばらつき)、SA S_A :水準間平方和(比べたい条件による差)、SB S_B :ブロック間平方和(ブロックによる差)、Se S_e :残差平方和(どちらでも説明できずに残った分)

ブロックを取り出さずに分析すると、SB S_B は行き場を失って Se S_e に加わります。残差平方和がそのぶん大きくなり、自由度で割った残差平均平方 Ve V_e も大きくなります。F比 は水準間平均平方を Ve V_e で割った値ですから、水準間の差がまったく同じでも F F は小さくなり、検出力 が下がります。裏返せば、ブロックを要因として取り出したときに F F が大きくなるぶんが、ブロック化の見返りです。ただし残差の自由度も a(b−1) a(b-1) から (a−1)(b−1) (a-1)(b-1) へ、b−1 b-1 だけ減ります。ブロック間に実際の差がほとんど無ければ Se S_e はわずかしか減らないので、自由度が落ちたぶん Ve V_e はかえって大きくなります。何をブロックにするかを見定めたうえで区切る操作です。

局所管理を「実験を監視する人を各ブロックに割り付けること」と読む誤りが、そのまま選択肢として出題されます。ブロックに割り付けるのは比べたい条件のほうで、人員の配置とは関係ありません。もう1つ、SB S_B を取り出すのはブロック間の差を比較から締め出すためであって、ブロックそのものの効果を検定するためではありません。日ごとに飛距離が違うと分かっても、それは知りたかったことではないからです。

風の変わる3日間で折り方3種の飛距離を比べる

紙飛行機の折り方A・B・Cで飛距離を比べます。屋外なので日によって風が違い、同じ折り方でも記録が動きます。そこで3日間をそのまま3つのブロックとし、各日にA・B・Cを1機ずつ、飛ばす順番を乱数で決めて試しました。飛距離 (m) は次のとおりです。

3日間の飛距離 (m) と平均
日折り方A折り方B折り方Cその日の平均
1日目101079
2日目9636
3日目5223
折り方の平均8646

総平均は 6 m です。折り方の平均は 8, 6, 4 なので、総平均からの偏差は 2, 0, −2。水準間平方和はブロック数を掛けて SA= S_A = 3 × (4 + 0 + 4) = 24。日の平均は 9, 6, 3 で偏差は 3, 0, −3 ですから、ブロック間平方和は SB= S_B = 3 × (9 + 0 + 9) = 54。全平方和は9個の値それぞれの偏差 4, 4, 1, 3, 0, −3, −1, −4, −4 の2乗和で ST= S_T = 84。残るのが Se= S_e = 84 − 24 − 54 = 6 です。

乱塊法の分散分析表
要因平方和自由度平均平方
折り方(水準間)24212
日(ブロック間)54227
残差641.5
全体848

自由度は水準数3・ブロック数3から、水準間 3 − 1 = 2、ブロック間 3 − 1 = 2、残差 2 × 2 = 4 で、合計すると 3 × 3 − 1 = 8 に一致します。折り方についてのF比は 12 ÷ 1.5 = 8.0。上側5%の境界は F0.05(2,4)=6.94 F_{0.05}(2, 4) = 6.94 なので、これを超えており、折り方によって飛距離が違うと判断できます。

同じ9個の数値を、日の違いを忘れて折り方だけの一元配置として扱うとどうなるか。ブロック間平方和 54 が残差に流れ込みます。

同じ9個のデータを2通りに分析した結果
残差平方和残差の自由度残差平均平方F比
日をブロックに取る(乱塊法)641.58.0
日を無視する606101.2

日を無視すると残差平方和は 6 + 54 = 60、自由度は 8 − 2 = 6 なので Ve= V_e = 60 ÷ 6 = 10 まで膨らみ、F比は 12 ÷ 10 = 1.2 に下がります。境界の F0.05(2,6)=5.14 F_{0.05}(2, 6) = 5.14 に届きません。折り方の平均は 8, 6, 4 のまま動いていないのに、比べる相手が大きくなったせいで差を検出できなくなりました。風という分かっている違いを最初にブロックへ追い出しておくかどうかで、結論が入れ替わったことになります。

入門問題

全 5 問
問 1

日によって条件が変わる場所で、3種類の条件を比べます。3日間を3つのブロックとして乱塊法で割り付ける方法として、最も適切なものはどれですか。

問 2

実験計画における局所管理(ブロック化)の説明として、最も適切なものはどれですか。

問 3

乱塊法の分析でブロック間平方和 SB S_B を取り出す目的として、最も適切なものはどれですか。

問 4

ブロック間に大きな差があるデータを、ブロックを要因として取り出さずに分析しました。起こることとして最も適切なものはどれですか。

問 5

ブロック間にほとんど差がないデータを、あえて乱塊法として分析しました。起こりうることとして最も適切なものはどれですか。