ひよこ統計

F比

統計検定2級

一元配置実験 の 分散分析表 には、水準間と残差という2つの平均平方が並びます。どちらもばらつきの大きさですが、拾っている散らばりの出どころが違います。水準間の平均平方 VA V_A が測るのは水準の平均どうしの離れ具合、残差の平均平方 Ve V_e が測るのは同じ水準の中での離れ具合です。この2つの比をF比といい、水準の平均どうしの離れ具合を、水準の中のばらつきと同じ物差しに直して比べた量です。

F=VAVe ∼ F(a−1, n−a)F = \frac{V_A}{V_e} \ \sim \ F(a-1,\ n-a)
VA V_A :水準間平均平方(水準間平方和を自由度 a−1 a-1 で割った量)、Ve V_e :残差平均平方(残差平方和を自由度 n−a n-a で割った量)、a a :水準数(因子に与えた条件の個数)、n n :総データ数、成立条件:帰無仮説のもとで、誤差が独立な正規分布に従い、全水準で共通の母分散をもつ

通常の一元配置F検定では、各誤差が互いに独立で正規分布に従い、全水準で母分散 σ2 \sigma^2 が等しいことを仮定します。この共通分散モデルのもとで、分母の Ve V_e は σ2 \sigma^2 を推定します。さらに、すべての水準で母平均が等しいという帰無仮説のもとでは、分子の VA V_A も同じ σ2 \sigma^2 を推定し、その比が自由度 (a−1,n−a) (a-1,n-a) のF分布に従います。母平均に差があると分子が大きくなる傾向があるため、上側を差の証拠として使います。これらの独立性・正規性・等分散性が崩れれば、同じF分布による厳密な判定は保証されません。

一元配置の分散分析表(水準数 a a ・総データ数 n n )
変動要因平方和自由度平均平方F F 値
水準間SA S_A a−1 a-1 VA V_A VA/Ve V_A / V_e
残差Se S_e n−a n-a Ve V_e
合計ST S_T n−1 n-1

母分散の比の検定 では棄却域を上下の両側に置きましたが、分散分析の F F 検定は常に上側だけです(両側検定と片側検定)。比べている中身が違うためで、こちらは水準間の差が分子だけを大きくする作りになっています。F F が 1 より小さいのは、水準の平均が偶然の範囲でたまたま近くに揃ったということでしかなく、母平均に差がある証拠にはなりません。振り分ける先が無いので、有意水準 α \alpha は上側へまとめて置きます。

判定は、計算した F F を F分布 の 上側確率点(パーセント点) Fα(a−1, n−a) F_{\alpha}(a-1,\ n-a) と比べ、超えていれば帰無仮説を棄却します。自由度を (n−a, a−1) (n-a,\ a-1) の順に読むと F分布表 の別の欄を見ることになるので、分子の自由度が先という並びは表を引く前に確かめます。水準が2つで、同じ独立2群データに等分散を仮定したプール型の両側2標本 t t 検定を行う場合は、F=t2 F=t^2 となり結論が一致します。Welch検定や対応のある t t 検定には、この等式をそのまま使えません。

3種類の接着剤A・B・Cで金具を接合し、はがれるまでの荷重(kg)を各3枚ずつ測りました。各誤差は互いに独立で正規分布に従い、3水準で母分散が等しいと仮定します。水準ごとの平均は 3・6・9 kg、総平均は 6 kg です。

はがれるまでの荷重(kg)
接着剤1枚目2枚目3枚目平均
A1353
B4686
C79119

一元配置実験のやり方で平方和を分けると、接着剤の違いによる平方和が SA=54 S_A = 54 (自由度 2)、残差の平方和が Se=24 S_e = 24 (自由度 6)でした。ここから平均平方を出し、その比をとります。

VA=542=27,Ve=246=4,F=274=6.75V_A = \frac{54}{2} = 27, \qquad V_e = \frac{24}{6} = 4, \qquad F = \frac{27}{4} = 6.75

独立性・正規性・等分散性の仮定のもとで、水準間の平均平方は残差の平均平方の 6.75 倍ありました。有意水準5%の上側確率点は F0.05(2,6)=5.14 F_{0.05}(2, 6) = 5.14 なので、6.75 > 5.14 から帰無仮説を棄却します。3種類の接着剤で母平均が等しいとは考えにくい、という結論です。ここで自由度を取り違えて F0.05(6,2)=19.33 F_{0.05}(6, 2) = 19.33 を読むと、同じ F F でも棄却しないという逆の判定になってしまいます。

平均が同じでも、水準の中の散らばりが大きければ棄却されない

同じ3種類で、水準ごとの平均は 3・6・9 のまま、各水準の値だけが A:0, 3, 6、B:3, 6, 9、C:6, 9, 12 と広がった場合を考えます。水準の平均が動いていないので SA=54 S_A = 54 、VA=27 V_A = 27 はそのままです。一方、各水準の偏差は −3, 0, 3 になり、残差平方和は (9+0+9)×3=54 (9+0+9) \times 3 = 54 、残差平均平方は 54÷6=9 54 \div 6 = 9 に増えます。

比は 27÷9=3.00 27 \div 9 = 3.00 まで下がり、5.14 を超えません。平均どうしの離れ具合はまったく同じでも、水準の中のばらつきが大きければ、その差は偶然でも起こりうる範囲だと判断されます。平均の差だけを見て結論を出せないのは、このためです。

2つの水準なら、等分散の独立2標本t検定と一致する

最初の接着剤をAとBの2種類に絞ってみます。この独立2群に等分散を仮定したプール型の両側 t t 検定を行うと t=−1.8371 t = -1.8371 、同じ6枚を分散分析にかけると水準間平方和は 13.5(自由度 1)、残差平方和は 16(自由度 4)です。平均平方に直すと VA=13.5 V_A = 13.5 ・Ve=16÷4=4 V_e = 16 \div 4 = 4 なので、比は 13.5÷4=3.375 13.5 \div 4 = 3.375 。これは (−1.8371)2≈3.375 (-1.8371)^2 \approx 3.375 と一致します。自由度も、t t の自由度が 4 なら F F は (1, 4) (1,\ 4) と対応します。これはプール型の独立2標本検定との対応であり、Welch検定や対応のある検定との一般的な対応ではありません。

入門問題

全 3 問
問 1

一元配置分散分析で用いる検定統計量(F比)の作り方として正しいものはどれですか。

問 2

4種類の水準について各5回ずつ測定し(総データ数 20)、誤差は独立な正規分布に従い、全水準で等分散と仮定します。水準間平方和 36(自由度 3)、残差平方和 64(自由度 16)を得ました。有意水準5%で F0.05(3,16)=3.24 F_{0.05}(3, 16) = 3.24 とするとき、F比と判定の組み合わせとして正しいものはどれですか。

問 3

一元配置分散分析のF検定で、棄却域を上側だけに置く理由として最も適切なものはどれですか。