一元配置実験 を計画するとき、条件を何種類そろえるかと並んで決めなければならないのが、1つの条件につき何個の実験単位を試すかです。同じ水準を複数の実験単位に割り付けることを反復といい、その個数を繰り返し数と呼びます。フィッシャーの3原則 では3本柱の1つとして挙がりますが、ここでは繰り返し数が分散分析の計算のどこに現れるかを追います。
水準の数を 、各水準の繰り返し数を とします。データは全部で 個集まり、そのうち 個ぶんは水準ごとの平均を推定するために使われるので、残りが残差の自由度になります。ここで 、つまり各水準を1個ずつしか試さないと、この自由度は 0 になります。残差平均平方 は残差平方和 をその自由度で割った量なので計算できません。水準間の差のほうも平方和を自由度で割って水準間平均平方 とし、判定はこの2つの比 で行うため、分母が無ければ差を比べる物差しそのものが手に入らないのです(比の作り方そのものは F比 で扱います)。反復が要る理由として、これが最もはっきりしています。
同じ実験単位を測り直すことは反復に数えません。1枚の布の汚れを4回測れば数値は4つ得られますが、そこに現れるのは測定のぶれだけで、布どうしの違いは含まれていません。これを として計算すると は本来より小さくなり、水準間の差が実際以上に大きな 値として出てしまいます。
繰り返しを増やす利点は、判定の側にも及びます。 は自由度 で推定されるため、 が大きいほど推定が安定します。加えて水準平均の 標準誤差 は の形で表されるので、 を4倍にすればこの値は半分になります。水準間の差が同じ大きさでも は大きくなり、帰無仮説が棄却されやすくなる、すなわち 検出力 が上がるということです。ただし総データ数は に比例して増えるため、どこまで反復するかは手間との兼ね合いで決めます。
洗剤A・B・Cで、同じ汚れを付けた布を洗い、残った汚れの量(mg)を測ります。まず、洗剤ごとに布を1枚ずつ、 で試した結果です。
| 洗剤A | 洗剤B | 洗剤C | |
|---|---|---|---|
| 残った汚れ (mg) | 6 | 8 | 7 |
Aが最も少ないように見えます。しかしこの3つの数字からは、洗剤を変えたせいなのか、布や汚れの付き方が偶然そうなっただけなのかを切り分けられません。残差の自由度は で、同じ洗剤の中にどれだけの幅があるかを示すデータが1つも無いからです。
次に、洗剤ごとに布を4枚ずつ、 に増やします。
| 1枚目 | 2枚目 | 3枚目 | 4枚目 | 平均 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 洗剤A | 5 | 6 | 6 | 7 | 6 |
| 洗剤B | 7 | 8 | 8 | 9 | 8 |
| 洗剤C | 6 | 7 | 7 | 8 | 7 |
水準内の偏差はどの洗剤も なので、2乗和は ずつ、合わせて残差平方和は 。自由度は なので、残差平均平方は です。総平均は 7 で、水準平均の偏差は だから水準間平方和は 、自由度 2 で 。F比は となり、 を超えるので、洗剤による差があると判断できます。
同じ12個の数値でも、1枚の布を12回測って集めたものだったら結論は変わります。測り直しの数値は 6.0, 6.1, 5.9, 6.0 のようにほとんど動かず、 は極端に小さくなります。分母が小さければF比は大きくなりますが、それは洗剤の差が大きいからではなく、洗剤の差を布どうしの幅ではなく測定器のぶれと比べてしまったからです。
一元配置実験における反復の説明として最も適切なものはどれですか。
水準数が 3、各水準の繰り返し数が 4 の一元配置実験を行いました。残差の自由度はいくつですか。
各水準を1個ずつしか試さない(繰り返し数が 1 の)実験について、正しい記述はどれですか。
水準数を変えずに繰り返し数を増やしたときに起こることとして、最も適切なものはどれですか。