ひよこ統計

一元配置実験

統計検定2級

9個の測定値が手元にあります。接着剤A・B・Cで試験片を接合し、はがれるまでの荷重を接着剤ごとに3枚ずつ測ったものです。実験 で名前を付けた因子を1つだけ動かし、各水準に複数の実験単位を割り当てたこの形の実験を一元配置実験といいます。集まった値は、どの水準のものかを i i 、その水準の中で何番目かを j j として yij y_{ij} と書き分けます。水準数を a a 、各水準の繰り返し数を r r (反復)とすれば全部で n=ar n = ar 個。添字を2つ持たせるのは、水準をまたぐ違いと同じ水準の中の違いという、性質の異なる2種類のばらつきを最初から別々に数えるためです。

接着剤ごとの、はがれるまでの荷重 (kg)
接着剤1枚目2枚目3枚目水準平均 yˉi \bar{y}_i
A1353
B4686
C79119

右端は各水準の3枚の平均 yˉi \bar{y}_i で、9個すべての平均である総平均 yˉ \bar{y} は 6 kg です。ここで、1つの観測値が総平均からどれだけ離れているかを、途中に自分の水準平均を挟んで2つに割ります。前半の yˉi−yˉ \bar{y}_i - \bar{y} は接着剤の違いで説明が付くずれ、後半の yij−yˉi y_{ij} - \bar{y}_i は同じ接着剤で試した3枚の中に残るずれです。2つを足すと yˉi \bar{y}_i が打ち消し合い、元のずれに戻ります。

yij−yˉ=(yˉi−yˉ)+(yij−yˉi)y_{ij} - \bar{y} = \left(\bar{y}_i - \bar{y}\right) + \left(y_{ij} - \bar{y}_i\right)
yij y_{ij} :第 i i 水準の第 j j 番目の観測値、yˉi \bar{y}_i :第 i i 水準に属する r r 個の平均(水準平均)、yˉ \bar{y} :全 n n 個の平均(総平均)

この式を2乗して n n 個ぶん足すと、2つの2乗和のほかに交差項 2∑i∑j(yˉi−yˉ)(yij−yˉi) 2\sum_{i}\sum_{j}\left(\bar{y}_i - \bar{y}\right)\left(y_{ij} - \bar{y}_i\right) が現れます。ところが水準を1つ固定すれば yˉi−yˉ \bar{y}_i - \bar{y} は定数として外に出せ、残る ∑j(yij−yˉi) \sum_{j}\left(y_{ij} - \bar{y}_i\right) は水準平均からの偏差の和なので 0 です。交差項は水準ごとに消え、ST=SA+Se S_T = S_A + S_e という足し算だけが残ります。回帰で予測値を挟んで 変動の分解 を作ったのとまったく同じ仕掛けで、挟む相手が予測値から水準平均に変わっただけです。水準間平方和が SA=∑i=1ar(yˉi−yˉ)2 S_A = \sum_{i=1}^{a} r\left(\bar{y}_i - \bar{y}\right)^2 と r r 倍の形になるのは、1つの水準平均が r r 個の観測値を代表しており、同じ2乗を r r 回足すことになるからです。

自由度も同じ形で分かれます。水準平均は a a 個ありますが総平均で1つ縛られるため水準間は a−1 a-1 、残差は各水準の中で r−1 r-1 個ずつ自由に動けるので a(r−1)=n−a a(r-1) = n-a 、合わせて全体の n−1 n-1 です。つまずきやすいのは n n の数え方で、水準数と繰り返し数の掛け算で数えるべきところを表の行数や水準数そのものと取り違えると、残差の自由度がまるごとずれます。3水準を3枚ずつなら n=9 n = 9 であって 3 ではありません。2つの自由度が決まればあとは 分散分析表 の形に値を並べるだけで、平均平方の比を作って判定する筋道そのものは F比・3群以上の平均値の差(分散分析) が引き受けます。

接着剤3種の荷重から平方和を分け、分散分析表を組み上げる

上の9個の値で、実際に平方和を2つへ分けてみます。水準平均は 3, 6, 9、総平均は 6 なので、総平均からの偏差は −3, 0, 3。各水準の平均が3枚ぶんを代表しているので、水準間平方和は SA= S_A = 3 × (9 + 0 + 9) = 54、自由度は 3 − 1 = 2 です。

残差のほうは、水準の中だけを見ます。Aの偏差は −2, 0, 2 で2乗和は 4 + 0 + 4 = 8、BもCも並びが同じなので同じ 8 になり、Se= S_e = 8 × 3 = 24、自由度は 9 − 3 = 6。全平方和は9個の偏差 −5, −3, −1, −2, 0, 2, 1, 3, 5 の2乗和で ST= S_T = 78 です。54 + 24 = 78 と一致し、自由度も 2 + 6 = 8 が全体の 9 − 1 = 8 に合っています。

接着剤を要因とする分散分析表
要因と合計平方和自由度平均平方F F 値
接着剤(水準間)542276.75
残差2464
全体788

平均平方は同じ行の平方和を自由度で割って VA= V_A = 54 ÷ 2 = 27、Ve= V_e = 24 ÷ 6 = 4。その比が F= F = 27 ÷ 4 = 6.75 です。自由度 (2, 6) (2,\ 6) の F分布 の上側5%点は F0.05(2, 6)=5.14 F_{0.05}(2,\ 6) = 5.14 なので、6.75 はこれを上回ります。有意水準5%で、接着剤によってはがれる荷重が違うと判断できます。母分散の比の検定 では上下の両側に棄却域を置きましたが、ここで上側だけを見ているのには理由があります。それは F比 で扱います。

手が滑りやすいのは SA S_A の r r 倍です。3枚ぶんを掛け忘れて SA= S_A = 9 + 0 + 9 = 18 としてしまうと、VA V_A は 18 ÷ 2 = 9 まで下がり、F F 値も 9 ÷ 4 = 2.25 となって 5.14 に届かず、結論が逆に振れます。ただしこの誤りは、18 + 24 = 42 が ST=78 S_T = 78 に一致しないことですぐ露見します。平方和を分けたら縦に足して全平方和へ戻るかを確かめる、という一手間が検算になります。

入門問題

全 4 問
問 1

一元配置実験で、第 i i 水準の第 j j 番目の観測値の総平均からのずれ yij−yˉ y_{ij} - \bar{y} を2つに分ける式として、正しいものはどれですか。

問 2

水準間平方和が SA=∑i=1ar(yˉi−yˉ)2 S_A = \sum_{i=1}^{a} r\left(\bar{y}_i - \bar{y}\right)^2 という、水準平均の偏差の2乗を r r 倍して足す形になる理由として、最も適切なものはどれですか。

問 3

3種類の接着剤について、試験片を3枚ずつ接合してはがれる荷重を測りました。一元配置分散分析での水準間と残差の自由度の組合せとして、正しいものはどれですか。

問 4

一元配置実験で平方和が ST=SA+Se S_T = S_A + S_e と過不足なく分かれるのは、偏差の分解を2乗して足したときに交差項が 0 になるからです。この交差項が消える理由として、最も適切なものはどれですか。