電池を5個測って標本平均 20.0 時間を得たとします。別の5個を測れば 19.6 時間になるかもしれません。計算の仕方は1つなのに、出てくる数値は標本ごとに変わります。この「1つの式」と「そのつどの数値」は、名前を分けて扱います。
母数 を推定するために標本から計算する式そのものを推定量、その式に実際のデータを入れて得られた数値を推定値といいます。標本平均 は推定量、20.0 時間は推定値です。
推定量は標本によって値が変わるので、それ自体がひとつの確率変数です。したがって期待値も分散も持ち、分布を考えることができます。いっぽう推定値はすでに出た1つの数値で、ばらつきようがありません。
この区別が要るのは、推定の良し悪しを語れるのが推定量のほうだからです。平均的に母数を当てにいくか(不偏性)、標本を大きくすると母数に近づくか(一致性)、そしてどれだけばらつくか——どれも推定量の性質であって、手元に出た1つの数値について言えることではありません。同じ母数を狙う推定量が複数あるとき、分散の小さいほうが精度の高い推定量です。
記号では、推定量を大文字(・)、推定値を小文字(・)で書き分けます。母数をギリシャ文字にするのと合わせると、(動かない母数)・(動く推定量)・(出てしまった推定値)の3つが記号だけで見分けられます。
2枚のコインA・Bの重さ ・ を、両側に皿のある天秤で量ります。量り方は2通りあります。AとBを同じ皿に載せて合計を量ると 、Aを左・Bを右に載せて差を量ると 。誤差 ・ は平均 0・分散 で互いに独立とします。
この2つの測定値から、Bの重さの推定量を作れます。
分散が を2つ足した形になるのは、 倍すると分散は 倍になり、独立な誤差どうしなら差の分散が和になるからです(和と差の分散)。
Bだけを皿に載せて1回量れば、その推定量の分散は です。ところが上のやり方なら、同じ2回の測定でAの推定量 も同時に得られ、そちらの分散も になります。2回でAとBを1つずつ量るのと、手間は同じ。それでいて分散は半分です。量り方という設計だけで精度が変わる、ということです。
実際に量ってみます。合計が 9.4 g、差が 1.4 g だったとすると、Bの推定値は g、Aは g です。ここで比べていた は推定量についての値で、出てきた 4.0 g・5.4 g のほうには分散も期待値もありません。どの量り方を選ぶかを判断できるのは、数値が出る前だからこそです。
推定量と推定値の説明として正しいものはどれですか。
同じ母集団から、大きさの等しい標本を取り直しました。値が変わるものはどれですか。
平均 0・分散 で互いに独立な誤差 ・ があります。 の分散はいくつですか。