「2つの母分散が等しい」という主張は、 とも とも書けます。母分散の比の検定が 帰無仮説 に置くのは後者の形です。比にしておくと、F分布 に従う量 から未知の母分散が約分で消え、標本の不偏分散だけで計算できる統計量が残るからです。
帰無仮説が正しければ は 1 の近くに散らばり、母分散が違えば 1 から離れます。「ばらつきが違うか」を問う両側検定では を上下へ ずつ振り分け、棄却域を または とします。ところが 上側確率点 の表にあるのは上側の点だけなので、下側の点は自由度を入れ替えた上側点の逆数 として読み替えます。分子と分母を取り替えた は自由度 のF分布に従います。もとの統計量が小さいことを、逆数が大きいことに置き換えられるわけです。
このページで使う等裾の両側検定では、観測した の下側確率と上側確率の小さいほうを2倍し、1を上限として p値 を定めます。F分布は非対称なので、常に上側確率だけを2倍したり、1から等距離の点を反対側に取ったりする方法ではありません。この定義なら、p値法と上下に ずつ置く棄却域の判定が一致します。
この検定を使う中心的な場面は、測定器の精度や製品の均一さなど、ばらつきの違い自体が関心事のときです。比がどの範囲にあるかまで知りたい場合は 母分散の比の信頼区間 を作ります。同じ標本で先にこの検定を行い、非有意ならプール型、有意なら Welch と切り替える二段階手続きは、最終的な検定の誤りの確率を名目水準どおりに保てないため推奨されません。平均差の方法は研究計画や事前の仮定に基づいて選びます。この検定には、成り立たなければ結論が意味を失う前提と、計算前に決めておく事柄があります。
同じ区間を走るバスの路線A・Bについて、到着の遅れ(分)を調べました。路線Aは5日、路線Bは9日ぶんで、値は 1, 3, 5, 7, 9(A)と 3, 3, 4, 4, 5, 6, 6, 7, 7(B)です。平均の遅れはどちらも 5 分で差がありません。それでもAは 1 分から 9 分まで散らばっており、日によって当たり外れが大きいように見えます。遅れは正規分布に従い、2つの標本は独立とみなして、この散らばりの違いを偶然で片づけてよいかを有意水準5%の両側検定で確かめます。
偏差の2乗和はAが 、Bが 。不偏分散はそれぞれ と で、割る相手は標本の大きさではなく自由度です。
自由度は です。F分布表から上側 2.5% 点は 、下側 2.5% 点は自由度を入れ替えた の逆数 として得ます。上側点 5.05 をそのまま逆数にした を下側点にしてはいけません。自由度を入れ替える手順が抜けています。
| 検定の向き | 棄却域 | の位置 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 両側 | または | 棄却しない | |
| 片側(上側) | 棄却する |
同じ でも、問いの向きで結論が分かれました。上側の確率は約 0.0453 なので、片側検定なら 0.0453 < 0.05 からも棄却されると分かります。等裾の両側p値は、小さいほうである上側確率を2倍した約 0.0905 で、5%では棄却しないという表の判定と一致します。そして、結果を見てから片側へ切り替えることはできません。片側にするなら「路線Aのほうが遅れのばらつきが大きいのではないか」という向きを、調べる前に定めておく必要があります。
不偏分散が 4 倍も違うのに両側では棄却されないのは、5 日と 9 日という調査日数の少なさによります。自由度が小さいと 自体が大きくばらつくため、境界が 5.05 と遠くに置かれるのです。同じ 4 倍の差でも、各 21 日ずつ調べて自由度が になれば上側 2.5% 点は 2.46 まで下がり、両側でも棄却されます。
2つの正規母集団について を検定します。用いる検定統計量とその帰無分布の組み合わせはどれですか。
標本の大きさが 6 と 13 の2つの正規母集団から標本をとり、(分子は大きさ 6 の群)を計算しました。帰無仮説のもとでこの統計量が従うF分布の自由度はどれですか。
標本の大きさが 7 と 11 の2群で (分子は大きさ 7 の群)を計算し、有意水準5%の両側検定を行います。・ のとき、棄却域の下側の境界はいくつですか。
同じ設定(自由度 、有意水準5%の両側検定、下側の境界 0.183・上側の境界 4.07)で、統計量が となりました。結論として正しいものはどれですか。