ひよこ統計

変数変換

統計検定2級

長さを cm で測るか mm で測るか、温度を摂氏でみるか華氏でみるか。同じ対象でも、どんな量に置き換えて記録するかで数値は変わります。このように x x や y y を別の量に置き換えてから扱うことを変数変換といいます。置き換え方には大きく2通りあり、目盛りを付け替えるだけの一次変換と、関係の形そのものを変える対数変換などがあります。

まず、形を変えるほうから見ます。残差プロット に弓なりの並びが残るのは、もとの関係が直線ではないという合図でした。増え方が加速する量ではこれが起こります。培養した細菌の数は1時間ごとに一定の倍率で増えるので、経過時間との関係は直線になりません。

2枚並べた散布図。どちらも横軸は培養を始めてからの経過時間(時間)で、0時間から9時間まで1時間おきに10個の点が打ってある。左の縦軸は細菌の数(万個)で、点は0に近いところからゆるやかに立ち上がり、後半で急に高くなって9時間では約65万個に達する、上へ反り返った並びになっている。当てはめた赤い直線は左端で0を下回っており、両端の点より下、中央あたりの点より上を通っていて、点から外れている。右の縦軸は同じ細菌の数の常用対数で、10個の点は0から1.8までほぼ等間隔に並び、赤い直線の上に乗っている。
同じデータを、もとの目盛り(左)と対数に置き換えた目盛り(右)で描いたもの

左はもとの目盛りのままの 散布図 です。最小二乗法 で直線を当てても、両端では実際より低く、中央では高く見積もっており、始めのころには負の個数まで予測してしまいます。残差でいえば両端が正・中央が負で、残差プロットのページで見た弓なりとは上下が逆向きですが、直線では追いきれない曲がりが残っているという意味は同じです。右は同じデータのまま、縦軸だけを常用対数に置き換えたものです。点はほぼ直線に乗り、この目盛りの上でなら log⁡10y^=a+bx \log_{10}\hat{y} = a + bx という回帰直線を当てられます。倍率で積み上がる量は、対数をとると一定の量ずつの増加に直るからです。

ここまでは、関係の形そのものを変える置き換えでした。もう一方は、目盛りを付け替えるだけの置き換えです。一次変換は x′=cx+d x' = cx + d という形で、平均・分散・標準偏差は次のように変わります。

xˉ′=cxˉ+d,sx′2=c2sx2,sx′=∣c∣ sx\bar{x}' = c\bar{x} + d, \qquad s_{x'}^2 = c^2 s_x^2, \qquad s_{x'} = |c| \, s_x
x′ x' :置き換えた後の値(x′=cx+d x' = cx + d )、c c :掛ける定数(0 ではない)、d d :足す定数、xˉ, sx2, sx \bar{x},\ s_x^2,\ s_x :置き換える前の平均・分散・標準偏差

平均には足した定数 d d がそのまま乗りますが、標準偏差には乗りません。全体を同じだけずらしても、値どうしの間隔は変わらないからです。標準偏差にも d d を足してしまうのが典型的な誤りです。相関係数 の動き方はさらに限られていて、c>0 c > 0 なら値はそのまま、c<0 c < 0 なら符号だけが反転し、絶対値は変わりません。標準化(z得点) や 偏差値 も、この一次変換の一例です。

単位を変えても相関係数が動かない

太さのまちまちな5本の棒について、長さと重さを測りました。太さが違うので、長いほうが軽いこともあります。

1本目2本目3本目4本目5本目
長さ x x (cm)24568
重さ y y (g)24586

平均はどちらも 5、長さの偏差は −3, −1, 0, 1, 3、重さの偏差は −3, −1, 0, 3, 1 です。2乗の合計はどちらも 9+1+0+1+9=20 9+1+0+1+9 = 20 なので分散は 20÷5=4 20 \div 5 = 4 、標準偏差は 2 です。偏差の積の合計は 9+1+0+3+3=16 9+1+0+3+3 = 16 で共分散は 16÷5=3.2 16 \div 5 = 3.2 、相関係数は 3.2÷(2×2)=0.8 3.2 \div (2 \times 2) = 0.8 となります。

ここで長さを mm に直します。x′=10x x' = 10x なので c=10 c = 10 、d=0 d = 0 です。値は 20, 40, 50, 60, 80、平均は 50、偏差は −30, −10, 0, 10, 30 で2乗の合計は 2000、分散は 400、標準偏差は 20 になります。平均も標準偏差もちょうど 10倍で cxˉ+d c\bar{x} + d と ∣c∣sx |c| s_x のとおり、分散は c2 c^2 倍すなわち 4×100=400 4 \times 100 = 400 になっています。共分散も 10倍の 32 になりますが、相関係数は 32÷(20×2)=0.8 32 \div (20 \times 2) = 0.8 で動きません。分子と分母が同じだけ大きくなるからです。

今度は重さのほうです。5本とも同じ目印のシールが 1g ぶん貼ってあったので、y′=y−1 y' = y - 1 で取り除きます。値は 1, 3, 4, 7, 5 で平均は 4 に下がりますが、全体が同じだけ下がるので偏差は −3, −1, 0, 3, 1 のまま、標準偏差も 2 のままです。相関係数もやはり 0.8 から動きません。

最後に、長さを「10cm の基準よりどれだけ短いか」に置き換えてみます。x′′=10−x x'' = 10 - x なので c=−1 c = -1 です。値は 8, 6, 5, 4, 2、平均は 5、標準偏差は 2 でどちらも変わりませんが、偏差の符号がすべて逆になるため偏差の積の合計は −16、相関係数は −0.8 です。「短いほど軽い」という同じ事実を、逆向きの目盛りで読み直しただけなので、結びつきの強さ 0.8 は保たれています。

対数で直線に直し、もとの量に戻して読む

図に使った細菌の数は、1時間ごとにおよそ 1.6倍ずつ増えます。倍率で増える量は、常用対数をとると一定の量ずつの増加になります。たとえば 1, 10, 100, 1000 の常用対数は 0, 1, 2, 3 で、10倍ずつの並びが 1 ずつの等間隔に直りました。図の右で点が直線に乗ったのは、これと同じ理由です。

その直線の傾きも図から読めます。右の縦軸の値は、0時間の 0 から9時間の約 1.8 まで上がっているので、傾きは 1.8÷9=0.2 1.8 \div 9 = 0.2 です。この 0.2 はおよそ log⁡101.6 \log_{10} 1.6 に当たり、1時間あたり何倍になるかを表しています。経過時間を t t とすれば、当てはめた直線はおよそ log⁡10y^=0.2t \log_{10}\hat{y} = 0.2t です。

この直線が返すのは対数の値なので、細菌の数として読むにはもとの量に戻します。t=10 t = 10 を入れると 0.2×10=2.0 0.2 \times 10 = 2.0 ですが、これは 2万個という意味ではありません。常用対数が 2.0 になる数は 102.0=100 10^{2.0} = 100 ですから、予測される細菌の数は 100万個 です。9時間の約65万個をさらに 1.6倍したくらいの値で、つじつまも合います。戻し忘れて 2.0 のまま読めば、答えは桁ごと違ってしまいます。

入門問題

全 4 問
問 1

あるテストの得点 x x は、平均が 6 点、標準偏差が 2 点でした。すべての得点を y=3x+4 y = 3x + 4 で換算したとき、y y の平均と標準偏差の組合せとして正しいものはどれですか。

問 2

ある容器について、底からの水位 x x (cm)と水の重さ y y の相関係数は 0.9 でした。同じ水位を、容器の口からの深さ x′=20−x x' = 20 - x (cm)で測り直したとき、x′ x' と y y の相関係数はいくつですか。

問 3

経過時間と細菌の数のように一定の倍率で増えていく関係に回帰直線を当てはめたところ、残差プロットに弓なりの並びが残りました。次のうち、この状況への対処として適切なものはどれですか。

問 4

ある培養実験で、細菌の数 y y (万個)の常用対数を経過時間 x x (時間)に対して当てはめたところ、log⁡10y^=1+0.5x \log_{10} \hat{y} = 1 + 0.5x となりました。x=2 x = 2 のときの細菌の数の予測値はどれですか。