ひよこ統計

母比率の差の検定

統計検定2級

2つの母集団で比率が等しいといえるかを標本から判断するのが母比率の差の検定です。ところが帰無仮説 H0:p1=p2 H_0: p_1 = p_2 は、2つが等しいと述べるだけで、その共通の値がいくつなのかまでは指定しません(帰無仮説と対立仮説)。値が決まらなければ標本比率の差のばらつきも計算できないので、まずその共通の値を、2つの標本を合わせて推定します。これをプールした比率といいます。

p^=x1+x2n1+n2\hat{p} = \frac{x_1 + x_2}{n_1 + n_2}
p^ \hat{p} :プールした比率(2群を合わせて求めた比率)、x1 x_1 ・x2 x_2 :各群で該当した個数、n1 n_1 ・n2 n_2 :各群の標本の大きさ

この p^ \hat{p} は各群の標本比率を標本の大きさで重みづけた平均です。単純に足して2で割った値とは、n1=n2 n_1 = n_2 のときにだけ一致します。母比率の差の区間推定 では 標準誤差 の根号の中に各群の標本比率をそのまま入れましたが、検定ではそこをプールした比率に置き換えます。推定には基準となる仮説がなく各群を別々に見るしかないのに対し、検定は「2つが等しいとしたら」という仮定の上で確率を計算するからです。同じ理屈の1標本版が 母比率の検定 で、そちらは帰無仮説が与える p0 p_0 を根号に入れました。

z=p^1−p^2p^(1−p^)(1n1+1n2)z = \frac{\hat{p}_1 - \hat{p}_2}{\sqrt{\hat{p}(1-\hat{p})\left(\dfrac{1}{n_1} + \dfrac{1}{n_2}\right)}}
p^1 \hat{p}_1 ・p^2 \hat{p}_2 :各群の標本比率、p^ \hat{p} :上の式で求めたプールした比率、n1 n_1 ・n2 n_2 :各群の標本の大きさ

ここから先の手順は 母比率の検定 と変わりません。z z は帰無仮説のもとで近似的に 標準正規分布 に従うので、両側検定なら 5% で ∣z∣>1.96 |z| > 1.96 、1% で ∣z∣>2.576 |z| > 2.576 が棄却域です。

この検定は 二項分布の正規近似 に支えられているので、近似が成り立つだけの人数が両群に要ります。目安は n1p^ n_1\hat{p} と n2p^ n_2\hat{p} 、n1(1−p^) n_1(1-\hat{p}) と n2(1−p^) n_2(1-\hat{p}) の4つがいずれも 5 以上であること。確かめるのに使うのは各群の標本比率ではなくプールした比率のほうです。

根号の中身が違うということは、区間推定と検定で答えが食い違う場合がある、ということでもあります。母比率の差では、95% の 信頼区間 が 0 を含むかどうかと有意水準 5% の両側検定の判定は、たいてい一致するものの、境界のすぐ近くではずれることがあります。標準誤差の作り方そのものが違うために生じる差で、どちらの計算も正しく行われています。

同じ内容の講習を、対面で 50 人、動画で 50 人が受けました。終了後に「内容を理解できた」と答えた人数は、対面が 31 人、動画が 19 人でした。理解できたと答える割合は、2つの受け方で違うといえるでしょうか。仮説は H0:p1=p2 H_0: p_1 = p_2 、H1:p1≠p2 H_1: p_1 \neq p_2 の両側、有意水準は 5% とします。

対面動画
受けた人数5050
理解できたと答えた人数3119
標本比率0.620.38

プールした比率は p^=31+1950+50=0.50 \hat{p} = \frac{31 + 19}{50 + 50} = 0.50 です。人数が同じなので、0.62 と 0.38 のちょうど真ん中になりました。p^=0.5 \hat{p} = 0.5 なので近似の目安は4つとも 50×0.5=25 50 \times 0.5 = 25 で、いずれも 5 以上を満たしています。標準誤差は 0.5×0.5×(150+150)=0.01=0.10 \sqrt{0.5 \times 0.5 \times \left(\frac{1}{50} + \frac{1}{50}\right)} = \sqrt{0.01} = 0.10 、検定統計量は z=0.62−0.380.10=2.40 z = \frac{0.62 - 0.38}{0.10} = 2.40 となります。

∣2.40∣>1.96 |2.40| > 1.96 ですから棄却域に入り、有意水準 5% では割合が違うと判断できます。p値でも確かめておくと、標準正規分布表から P(Z≥2.40)=0.0082 P(Z \ge 2.40) = 0.0082 なので、両側では 2×0.0082=0.0164 2 \times 0.0082 = 0.0164 。ところが水準を 1% に取り替えると、境界は 2.576 で 2.40 はその内側、p値も 0.0164 > 0.01 ですから棄却できません。同じ z z の値が、先に決めた水準しだいで別の結論を返します。

仮に区間推定と同じ形で各群の標本比率を根号に入れていたら、標準誤差は 0.62×0.3850+0.38×0.6250=0.0971 \sqrt{\frac{0.62 \times 0.38}{50} + \frac{0.38 \times 0.62}{50}} = 0.0971 、z z は 2.47 でした。差はわずかで、この問題では結論も変わりません。それでも検定で使うのはプールしたほうです(出題で非プールの式が示されたときは、その式に従います)。ここで測っているのは「2つの母比率が等しい世界で、0.24 という差はどれくらい起こりやすいか」であり、その世界に比率は1つしかないからです。

入門問題

全 4 問
問 1

母比率の差の検定では、標準誤差の根号の中に、各群の標本比率ではなく2群を合わせてプールした比率 p^ \hat{p} を入れます。その理由として最も適切なものはどれですか。

問 2

A群は 40 人中 16 人、B群は 60 人中 12 人が該当しました。プールした比率 p^ \hat{p} はいくつですか。

問 3

200 人ずつの2群を調べたところ、該当者は 50 人と 30 人でした。母比率の差の検定統計量 z z はいくつですか。

問 4

上の検定で z=2.50 z = 2.50 が得られました。有意水準 1% の両側検定での結論はどれですか。