ひよこ統計

独立性の検定

統計検定2級

昼休みの校内放送で音楽を流すことについて、ある学校の生徒 100 人に尋ねました。賛成は運動部で 70%、文化部で約 37%。これだけ開きがあれば意見が違うと言ってよさそうですが、部活動と意見のあいだに何の関係もなくても、選ぶ 100 人を取り替えれば割合はいくらか動きます。その動く範囲に収まる開きかどうかが問題です。

この開きを偶然の範囲として片づけてよいかを判断するのが独立性の検定です。2つの分類を組み合わせて度数を数えた クロス集計表(分割表ともいいます)について、両者が無関係だという仮定を 帰無仮説 に置きます。ここでいう無関係、すなわち独立とは、A A を部活動のどれか、B B を意見のどれかとして、どのセルでも P(A∩B)=P(A)P(B) P(A \cap B) = P(A)P(B) が成り立つことです。

部活動賛成どちらでもよい反対合計
運動部287540
文化部22231560
合計503020100
eij=(行の合計)×(列の合計)総度数e_{ij} = \frac{(\text{行の合計}) \times (\text{列の合計})}{\text{総度数}}
eij e_{ij} :第 i i 行・第 j j 列のセルに入るはずの度数、行の合計 \text{行の合計} :そのセルが属する行の度数の合計(表の右端の値)、列の合計 \text{列の合計} :そのセルが属する列の度数の合計(表の下端の値)、総度数 \text{総度数} :表全体の度数の合計(この例では 100 人)

この式が与えるのは、独立が正しいとき各セルへ入るはずの度数、すなわち期待度数です。独立ならセルの確率は行の割合と列の割合の積になり、総度数を掛けると上の形になります。使うのは行ごと・列ごとの合計(周辺合計)だけで、自由度もここから決まります。合計を保ったまま度数を動かせるのは、r r 行 c c 列の表なら左上の (r−1)×(c−1) (r-1) \times (c-1) 個のセルまでです。上の表なら、運動部の 28 と 7 を決めた時点で反対は 40−28−7=5 40 - 28 - 7 = 5 と定まり、文化部の3つも列の合計から埋まります。自由に動ける個数が自由度なので、(r−1)(c−1) (r-1)(c-1) という積になります。

独立という仮定が捨てられても、言えるのは2つの分類に関連がある、というところまでです。部活動が意見を変えさせた、とは読めません。両方に影響する別の要因が背後にあるかもしれず、表の数字だけでは向きも決まりません。関連の有無と 因果関係 は別の問いで、後者には 実験のデザイン のような仕組みが要ります。

あとは各セルの観測度数 o o と期待度数 e e のずれを (o−e)2e \frac{(o-e)^2}{e} にして足し上げます。この カイ二乗値 の求め方も、棄却域を上側だけに置く理由も 適合度検定 と同じで、違うのは期待度数の作り方と自由度だけです(両側検定と片側検定)。各対象を重複なく1つのセルだけに数え、観測単位どうしを独立に扱えることが前提です。そのうえで、どのセルでも期待度数が 5 以上なら、帰無仮説のもとでこの値は自由度 (r−1)(c−1) (r-1)(c-1) の カイ二乗分布 に近似的に従います。対応のある測定やクラスター化された観測には、この式をそのまま使えません。

上の 100 人のデータで、有意水準 5% の検定を通してみます。まず期待度数です。運動部で賛成のセルなら 40×50100=20 \frac{40 \times 50}{100} = 20 人、文化部でどちらでもよいのセルなら 60×30100=18 \frac{60 \times 30}{100} = 18 人。6つのセルすべてを同じように計算すると次の表になります。

部活動賛成どちらでもよい反対合計
運動部2012840
文化部30181260
合計503020100

周辺合計は観測度数の表と同じままで、中の6つだけが動きました。ずれは運動部が +8, −5, −3 +8,\ -5,\ -3 、文化部が −8, +5, +3 -8,\ +5,\ +3 と、符号だけを反転させた形に揃います。列の合計が変わらない以上、運動部で多かったぶんは文化部で必ず足りなくなるからです。このずれを2乗して期待度数で割り、6つ分を足し上げます。

χ2=(28−20)220+(7−12)212+(5−8)28+(22−30)230+(23−18)218+(15−12)212=10.68\chi^2 = \frac{(28-20)^2}{20} + \frac{(7-12)^2}{12} + \frac{(5-8)^2}{8} + \frac{(22-30)^2}{30} + \frac{(23-18)^2}{18} + \frac{(15-12)^2}{12} = 10.68

自由度は (2−1)(3−1)=2 (2-1)(3-1) = 2 です。自由度2のカイ二乗分布の 上側確率点 を表から読むと、上側 5% 点は 5.99。検定統計量 10.68 はこれを大きく超えるので、独立という帰無仮説は棄却されます。部活動と意見には関連がある、というのがここでの結論です。

同じ人数でも、開きがもっと小さければ結論は変わります。運動部の内訳が 24・10・6(文化部は 26・20・14)だったとすると、ずれは +4, −2, −2 +4,\ -2,\ -2 に縮み、カイ二乗値は 1620+412+48+1630+418+412=2.72 \frac{16}{20} + \frac{4}{12} + \frac{4}{8} + \frac{16}{30} + \frac{4}{18} + \frac{4}{12} = 2.72 まで下がって 5.99 に届きません。賛成の割合は運動部 60%・文化部 約 43% と依然として差がありますが、100 人という規模ではこの程度の差は偶然でも起こりうる、と判断されます。

入門問題

全 5 問
問 1

2つの分類を組み合わせたクロス集計表に独立性の検定を行うとき、帰無仮説として置く主張はどれですか。

問 2

総度数 200 人のクロス集計表があります。あるセルについて、そのセルが属する行の合計は 60、列の合計は 50 でした。独立を仮定したときのこのセルの期待度数はいくつですか。

問 3

3 行 4 列のクロス集計表に対する独立性の検定で、検定統計量が近似的に従うカイ二乗分布の自由度はいくつですか。

問 4

r r 行 c c 列のクロス集計表について、有意水準 5% で独立性の検定を行います。検定統計量と比べる値はどれですか。

問 5

ある調査で、通学手段と部活動の種類について独立性の検定を行ったところ、有意水準 5% で帰無仮説が棄却されました。ここから言えることはどれですか。